ガイガーカウンター Polimaster PM1912 の試作品を
たろうまる
さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.
この機種は来年発売の新製品だそうです.
たろうまる
さんから,色々測定器をお借りしておりますが,
今度新規に発売を開始するということで,PM1912 をレビューさせて頂けることになりました.
この機種は今後扱う予定とのことですので,購入を検討される方は以下ページから問い合わせをしてみてください.
放射線測定器のたろうまる:問い合わせページ
この機種の正式なページは現在準備中とのことです.
PM1912 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
ただし,ガイガーカウンターというよりは,ログ記録機能付きUSB測定器という表現が近いと思います.
特徴としては,
届いたものは次の写真のようなものです.
お借りしたのは試作品のため白いですが,製品版は黒いモデルになるそうです.
パッケージの準備とかはこれからのようで,測定器とCD-ROMのみお借りする形となりました.
8cmのCD-ROMにマニュアルとソフトウェアが入っています.
この測定器を使うにはPCが必須のためか,紙のマニュアルは用意されていないようです.
測定器は左の写真のように,USBメモリのような形をしています.
大きさも普通のUSBメモリくらいです.
USBコネクタと反対側に,ストラップが付けられる穴があります.
ここにストラップを付けて,鞄などに入れて持ち歩くと良さそうです.
PM1912 は多少厚みがあります.
おそらく,中にGM管が入っているためだと思いますが,裏側は少し丸く出っ張っているような形状です.
こちらはたろうまるさんから送って頂いた黒モデル(製品版)の写真です.
形状も少し違うようです.
裏面にはボールペンのようなプラスチックのクリップが付いているそうです.
放射線源をそばに置いて反応速度を調べてみました.
Cs-137の密封線源を近づけてみました.
徐々にグラフが上がっていきますが,しばらくすると統計がリセットされて急激に高くなりました.
線源を遠ざけた後は,徐々に線量率が下がり,しばらくすると統計がリセットされて,元の値に戻りました.
統計がリセットされると,Dose Rate Accumulation Time がゼロになるので,そこで確認ができます.
複数線源を近づけてみました.
このくらいの線量率だと数秒で統計がリセットされ,すぐに高い値になるようです.
何度か測定してみたところ,GM管の製品にもかかわらず,0.00~0.01μSv/hとかなり優秀でした.
新製品で良くなっているのでしょうか?
PM1912 はPC接続が必須の製品です.
専用の付属ソフトで,PCから線量率を見たり,履歴を管理したりします.
PM1912 は,500ポイントのメモリ容量があります.
5分間隔で41.6時間,3分間隔で25時間,1分間隔で8.3時間の記録が可能です.
バッテリーの持ちを考えると,3~5分程度に設定して,毎晩PCに接続するのが良さそうです.
上記の画面で,現在の線量率と積算線量を表示できます.
右側にはグラフが表示されます.グラフは1秒・1分・1時間単位に切り替えることができますが,
PCにつなげている間のみのグラフ表示となります.
(履歴として残っている物はここには反映されません)
左側には,線量率と積算線量が表示されます.
PCの広い画面を生かして,誤差がかなりわかりやすく表示されています.
誤差の他に,何分前からの統計で線量率を出しているのかも表示されます.
プルダウンで Required accuracy を変更することで,求める誤差まで後どのくらいの時間待てば良いかも確認できます.
この画面で,PC接続中と,PCから取り外している間の履歴を確認できます.
PCに接続すると,自動的にPC側に履歴がコピーされ,過去の全ての履歴が閲覧できます.
左上にある Select Date: を押すと,カレンダーが表示され,任意の日付のグラフを見ることができます.
ただ,グラフ表示は無いようで,数値での確認のみのようです.
データは Export できますので,別途それを集計することは可能です.
Exportしたデータは以下のように,セミコロン区切りになっています.
Date;Time;Type;Dose Rate;Dose;Dose Time
2011/12/11;21:57:25;Background;0.07 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:30:00
2011/12/11;21:58:25;Background;0.07 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:31:00
2011/12/11;21:59:24;Background;0.08 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:32:00
2011/12/11;22:00:26;Background;0.08 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:33:00
2011/12/11;22:01:25;Background;0.08 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:34:00
2011/12/11;22:02:26;Background;0.08 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:35:00
2011/12/11;22:03:26;Background;0.08 μSv/h;0.04 μSv;0. 00:36:00
2011/12/11;22:04:21;Turning Off;;;
2011/12/11;22:03:37;Background;0.07 μSv/h;0.04 μSv;
2011/12/11;22:04:36;Background;0.07 μSv/h;0.04 μSv;
2011/12/11;22:05:37;Background;0.07 μSv/h;0.04 μSv;
マップ画面に自分の場所を設定すると,線量率の履歴を場所にひも付けて公開できます.
同様に他のユーザが公開したデータを,このマップ画面で参照することができます.
旗のアイコンを移動して,自分の場所を設定します.
PM1912 の利用ユーザ同士で,線量率を比較できるマップを作るような形になっているようです.
他のユーザの線量率を,時系列の履歴として確認することができます.
他のユーザには,Googleマップのピンが表示されており,ピンをクリックするとそのユーザの履歴が表示されます.
履歴は一定量のみ表示されるようです.
Date Time の列に,何故か時刻しか表示されないため,最近の履歴ということはわかるのですが,詳細がわかりません.
まだ作成途中のようです.
その他,マップ画面を操作していると,時々 JavaScript エラーが出る事がありました.
来年発売とのことなので,発売時には直っているのではないかと思います.
(レビュー中にも新しいバージョンが届きました.)
設定画面は4画面あります.
1画面ずつ紹介します.
接続設定のようですが,特に変更の必要性がなさそうです.
測定器の設定を行います.
線量率の閾値2つと,積算線量の閾値を指定できます.
閾値を超えると,測定器のLEDの色が変わりますが,音などは出ませんので,
PCにつなげた状態で無いと,閾値を超えたことに気づくのは難しそうです.
この画面で,積算線量のリセット,履歴の削除も行えます.
履歴の保存設定を行う画面です.
履歴の保存は,自分用の記録間隔と,マップ画面で他の人と共有する場合の記録間隔の2つあります.
自分用の記録間隔は,PCに繋げていないときにも使用されます.
記録できるポイント数が500ですので,5分間隔であれば41時間程度の記録ができることになります.
1分だと8時間程度しか記録できないので,2~5分間隔くらいで設定するのが良さそうです.
アプリケーションの設定です.
言語,単位をR/hとSv/hのどちらにするか,アプリケーションのデザインを設定することができます.
本ソフトは,手元の Windows7 64bit 環境で問題なく動作しました.
マニュアルには,Vista/XP/7 が動作環境と記載されており,64bit対応については記載がありませんが,
本ソフトウェアについては大丈夫なようです.
測定値の実際の値の比較・線量率の変動のテストを行いました.以下も参照して下さい.
参考:線量率の変動比較・第7回 (2011/12/18)
本体の大きさから,小さなGM管を使っているのだと思いますが,GM管でも高めな数値にはならないようです.
自己ノイズの測定結果から考えても,シンチレーション方式に近い線量率が出るようになっているように思います.
線量率の表示も安定しており,数値が読み取りやすく使い勝手が良いと思います.
他の機種と,一晩の間の積算線量を比較してみました.
7~10時間程度の間の積算線量を,経過時間で割り算してSv/hを求めました.
- | PM1912 | RD1008 | TA100 | DoseRAE2 |
---|---|---|---|---|
1 | 0.0589μSv/h | 0.0773μSv/h | 0.0580μSv/h | 0.0705μSv/h |
2 | 0.0586μSv/h | 0.0818μSv/h | 0.0606μSv/h | 0.0535μSv/h |
3 | 0.0584μSv/h | 0.0828μSv/h | 0.0609μSv/h | 0.0548μSv/h |
4 | 0.0631μSv/h | 0.0824μSv/h | 0.0515μSv/h | 0.0734μSv/h |
PM1912 は来年2012年に発売される機種です.
発売前にお借りしましたが,この機種を使うのは2つのケースがあると思います.
まず便利に使えるのが,子どもに持たせて積算線量や線量率の変化を確認する使い方です.
子ども自身が線量率を見て判断したり,アラームが鳴ったときに対処できる場合は他の機種が良いですが,
小さい子どもの場合,そういったことは難しいです.
とりあえず持たせて,被曝量だけでもちゃんと管理しておきたい,という使い方にあっています.
価格も比較的安いので,その面でも子どもに持たせやすいと思います.
毎日持たせて,家に帰ってきたらPCに繋げて朝まで充電する,といった形で使うことができます.
もう1つは,PCに繋げっぱなしで利用する方法です.
GM管などの線量率をPCで公開されている方もいますが,PM1912もそういった使い方が可能です.
PC接続機能がある他の機種に比べて,価格も手ごろで実行しやすいと思います.
線量率の表示がないちょっと変わった機種ですが,価格も安く,購入しやすい機種だと思います.
子どもの線量率を把握したり,PCで線量率公開などしてみたい場合に,
2台目として追加で購入するのに最適だと思います.
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
積算線量の記録が途切れる期間を短くできますから,積算線量計としてPM1621を利用する場合には非常に良いサービスだと思います.
たろうまるさんより,他で購入された方からの修理の依頼を受けることがあるとの話をお聞きしました.
その際,特にアメリカで生産された物は日本経由では一切取り扱えないそうです.
ポリマスター社の方で,アメリカ製のものは日本に入るべきでは無い,という考えのようで,
交渉したもののメーカー側に修理を受け付けてもらうことはできなかったとのことです.
普通は購入したショップなどで修理依頼になると思いますが,
放射線測定器の場合,結構いい加減な(?)ルートで売られる場合もありますので,
そのあたり注意が必要なようです.