PM1610 に続き,ガイガーカウンター Polimaster PM1405 も販売を開始したとのことで,
たろうまる
さんから無償でお借りすることができました.ありがとうございます.
PM1405 の使用感などをまとめてみました.
PM1405 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
届いたものは次の写真のようなものです.
写真には写っていませんが,単3電池2本も付属しています.
箱の中の奥に入っていたので撮影時に見落としました.
本体の他に
たろうまる
さんが翻訳した日本語マニュアルが付属しています.
PM1610のようなかんたんマニュアルは無く,製品の英語版マニュアルを翻訳したものになっています.
本体の外観はこんな感じです.
裏面の+の位置の中にガイガー管が入っています.
ガイガー管にはカバーが有り,スライドして開けることができます.
開けると下の写真のような感じです.
虹色に光る薄い膜のようなものがあります.非常に繊細なので取扱注意です.
製造時についたものか,小さな埃が1つ付いていましたが,取ったりするのはNGと思います.
大きさは以下の写真のように,結構大きめです.
PM1405とPM1610を並べて,ほぼ同時に測定を開始してみました.
PM1405は150cpm/μSv/h,PM1610は45cpm/μSv/hと,3倍強の感度があるため,
誤差の収束が早くなっています.
また,床の上に置いたためか,PM1405の方が0.02μSv/hほど低い数値となりました.
窓際で,外に向けて立てかけて測定するとほぼ同じ値になったので,方向特性の違いによるものかもしれません.
パンケーキ型GM管を利用しているためか,方向によって感度にかなり差があります.
PM1610はどの方向でも最大±25%でしたが,PM1405は以下のようにかなりの違いがあります.
特に横方向について感度が悪いようです.
空間線量を測定するときは,高さ1mくらいで,水平に持って測定するのが良さそうです.
PM1405には,β線とγ線を感知できるガイガーミュラー管が内蔵されています.
β線を遮蔽するカバーがスライドするようになっており,
カバーを開け閉めすることで,γ線のみ,β線+γ線の測定を切り替えることができます.
更に,β線+γ線の測定結果と,γ線の測定結果の差分を内部で計算し,
β線のみの線量を表示することもできます.
γ線のみの測定モードです.
感度が3倍強あるだけあって,PM1610と比較するとかなり素早く反応します.
体感では3倍より反応が良い感じがします.
線源を近づけて2回動画を撮影しました.
小さな線源ですので,位置の違いによりそれぞれの測定器が捉える放射線量が違いますので,
条件はきちんとそろっていませんが,だいたいの傾向はわかると思います.
MEASURE γモードでアラームが鳴った場合,ボタンを押すとアラームが一度消えます.
(SEARCHモードなど,他のモードでは消えないようです)
その際は,しばらく画面左上に「B」のマークが表示されます.
マニュアルには記載されておらず,たまたま出た「B」マークが何で出たのか分からず気になったのですが,
たろうまるさんに問い合わせたところすぐに製造元に確認してもらえました.
β線のみを測定するモードです.
このモードには,通常の測定モードと,同じ環境で多数回β線を測定する2つのモードがあります.
通常のモードは,β線+γ線で測定後,γ線を測定します.その差からβ線の量を表示します.
多数回の測定を行う EXPRESS βモードの場合は,最初にγ線を1回測定し,その数値を記録します.
その後,β線+γ線で測定を行い,差からβ線の量を表示します.
カバーを閉じた状態で,1μSv/hくらいの状況で通常の MEASURE βモードにしてみます.
MEASURE βモードにすると,上の中央の画像のように,OPEN FILTER の指示が出ます.
ここで測定器の後ろのカバーを開けて,NEXT(→)ボタンを押と,右側の画像になります.
そのままNEXT(→)ボタンを押すと,β線+γ線での測定が始まります.
β線+γ線の測定中は上の左側の表示になります.
右下の誤差の%が10%未満になるまで待ちます.
その後,MEMORY(→)ボタンを押すと,右側の画面になるので,YES(→)ボタンで進みます.
10%以上の場合は,MEMORY(→)ボタンを押したときに HIGH STAT. ERROR 表示が出ますが,無視して続けることができます.
MEMORY画面で,NO(←)ボタンを押したり,HIGH STAT. ERROR 画面で NOボタンを押すと,
最初から測定がやり直しになるので注意が必要です.
(また誤差99%からやり直しになります.)
先ほどと同様に,今度はCLOSE FILTERの指示が出るので,カバーを閉じてNEXT(→)ボタンで進めます.
そうすると,右の画面になります.
今度はγ線のみを測定しているので,先ほど測定したβ線+γ線から,今測定中のγ線を引いた値が表示されます.
この数値は15%未満になると読むことができます.
この結果もMEMORYで保存できますが,保存するときは10%未満でないと HIGH STAT. ERROR がでます.
上記の画面写真では18%になっていますが,測定によっては待っても待っても15%未満にならないようです.
26.8min-1/cm2ではβ線の量が少なすぎるのかもしれません.
また,β線が無い綺麗なときは,カウントができないために誤差は99%のままになるようです.
このモードでの実際の測定例を撮影しました.
後半はずっと誤差が小さくなることを待っている状況ですが,今回はかなり待っても15%以下にはなりませんでした.
β線+γ線で汚染場所を探すモードです.
GM管は,γ線の検出効率が低いため,β線とγ線の両方を検知した方が,汚染を素早く検出できます.
線源を20秒毎に5cmずつ,徐々に近づけたときの反応状況を撮影しました.
途中まで全然反応が無いので,急ぎの場合は半分くらいから見ると良いと思います.
パンケーキ型ガイガー管はγ線よりβ線によく反応するため,近距離では感度が良くなります.
その上,β線に関しては測定器の奥の方向によく反応するため,かなり近づけたときに反応があります.
このため,汚染場所を特定するのに向いていると思いますが,広い場所で汚染箇所を探すのには時間がかかりそうです.
また,放射線を感知したときにピッと音がするのでは無く,放射線を感知したら,内部で線量に変換し,その線量の数値を音で表しているようです.
このためワンテンポ遅れて反応するような形となっています.
放射線を感知したときに音が出る堀場 PA-1000 Radiの動画もアップしましたので,こちらと比べてみると違いが分かります.
堀場 PA-1000 Radi は2000cpm/μSv/hの高感度ですが,PM1405もこれにひけを取らない反応速度があることが分かると思います.
また,Radiの方はγ線での感知のためか,少し離れた位置から反応しています.
PM1405はPCに接続して使うことができます.
付属のソフトウェアには以下の機能があります.
メインの画面は下のキャプチャのようになっています.
日付・測定モード・測定値が残ります.
警告などがあればそれも記録され,赤字で表示されます.
本体には,一定時間ごと(60~90000秒ごと)に線量が自動的に記録されます.
更に,本体を操作してMEMORYすれば,その値も記録されます.
MEASURE βモードなどで測定したり,MEASURE γで記録操作をすれば,その数値も残ります.
上記の画面のデータはエクスポート可能です.
普通の保存と,エクスポートの2つがありますが,普通の保存は拡張子.xlsファイルにタブ区切りで保存されます.
エクスポートは再度このソフトウェアで読み込むためのもののようで,中味はバイナリ形式です.
.xlsファイルの中味は次のようなフォーマットになっています.
日付・時刻・モード・測定値・警告・コメント,という構成になっています.
コメントは付属ソフトウェアで,各行に記入することができるようになっています.
2011-07-31 | 12:21:13 | Measurement gamma | 1.04± 2% μSv/h | ||
2011-07-31 | 12:20:13 | Measurement gamma | 1.04± 2% μSv/h | ||
2011-07-31 | 12:19:13 | Measurement gamma | 1.04± 3% μSv/h | ||
2011-07-31 | 12:18:13 | Measurement gamma | 1.04± 3% μSv/h | ||
2011-07-31 | 12:16:13 | Measurement beta | 26.67±18% 1/(min*cm2) | ||
2011-07-31 | 12:15:13 | Measurement beta | 26.70±18% 1/(min*cm2) | ||
2011-07-31 | 13:39:47 | Measurement beta | 10.32±39% 1/(min*cm2) | Threshold "Danger" is exceeded! |
設定画面は次のようになっています.
History recording interval, sec. で一定時間ごとに履歴を残すことができます.
また,Measurement in で単位を変えることもできます.
この2つは本体ではできず,PCソフトウェアからしか設定できないようです.
History recording interval, sec. での保存機能は,PCと繋げていないときでも自動的に記録され続けます.
ただし,メモリのデータは電源を切ると消えてしまいます.
(本体でMEMORY操作をして記録されたデータも同様に電源オフで消えます.)
メモリの記録量には容量制限があると思うのですが,どのくらいまで記録できるかはマニュアルには記載がありませんでした.
次はオンラインモードの画面です.
オンラインモードにすると,このウィンドウが開き,測定器の線量がPC側にリアルタイムに表示されます.
PM1405 は,測定モードによってフィルタの開け閉めをしますが,
フィルタと画面のモードは連動しているわけではないので,
SEARCH βγモードでフィルタを閉じることもできます.
このことを利用して,γ線のみの場合と,γ線+β線の場合の検出能力を比較してみました.
β線を入れることで,放射線の検出回数が急激に増えています.
細長い円筒形のGM管はγ線向き,PM1405のような平べったい円筒型のパンケーキ型GM管はβ線向きのようですが,
β線に対する感度がγ線より大幅に高いことがよくわかります.
γ線のみだと 3.6 s-1(毎秒3.6回検出)ですが,β線も入れると
1.50e2 s-1 = 150 s-1(e2は10の2乗を掛けるという意味なので100倍)
になりますので,β線の方が約40倍ほど検出しやすいことになります.
(置いてある線源は,Cs137 ですので,β線とγ線の放出回数はだいたい同じです.)
身近なところでβ線の測定をいくつか行ってみました.
サムネイルをクリックすると測定場所の写真が大きくなります.
幸いにも身近な場所の汚染が少ないようで,β線の測定例としてはイマイチだったかもしれません.
γ線でも,線量が低いと誤差が小さくなるまでに時間がかかりますが,β線でも同じような状況になります.
β線計測の場合,2回に分けて測りますので,誤差が大きいと引き算したときに誤差が小さくなっていかず,
数値がふらつき続けてしまいます.
γ線なら,測定中にして満足できる数値になるまで置いておけば良いのですが,β線の場合はどこかでβ+γ線測定を打ち切って,
γ線測定に切り替えなければならないので,いつβ+γ線を打ち切るか…というのは少し悩みます.
十分β線がでていればすぐに誤差が減っていくと思いますので,時間がかかるような場所は比較的安全と考えても良いかもしれません.
今回試した中では,β線量がゼロ(のはず)のところでは,ちゃんと0表示がされますので,部屋の掃除などのチェックには有効に使えそうです.
狭い範囲の汚染をチェックできるのはβ線測定のメリットですね.
掃除前後での汚染除去チェックなどはかなり正確に確認できるのではないかと思います.
他の機種と表示値を比較してみました.
PM1610と比較すると感度が高い分,数値が安定しやすいようです.
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
たろうまるさんのページで,min-1/cm2値からBq/cm2への換算係数が公開されています.
メーカーの方で,セシウムを塗布した平面の線源を用意して実験的に求めたそうです.
例えば,植え込みの草の上の 6.48 min-1/cm2であれば,
6.48 min-1/cm2 × 116.4 = 754.272 Bq/cm2
となります.
今回の測定例の方は,対象がセシウム137のみではありませんし,試料からの距離も5mmではないと思うので,結構な誤差はあると思います.
セシウムによる汚染が多く,もっと測定値が高いところであれば,ある程度の目安となる数値が得られそうです.
※2012/11/25追記
2週間ほど貸して頂き,β線の測定などを試すことができました.
表面汚染が計測できる機種として,興味深く使わせて頂きました.
γ線は透過力が強く,遠くまで飛ぶため,汚染されているかされていないかという判断は難しくなってしまいます.
β線の場合は1mくらいしか飛ばないので,この場所が汚れている,というのをちゃんとみることができるのが良いですね.
実際に部屋の中は0,汚染されてそうなフィルタはちゃんと高い数値,屋外はそれなり…と,そんなに汚染が無い範囲でもきちんと判別できる結果が出ました.
表面汚染の調査用には,PM1405 のようなパンケーキ型GM管が向いていますが(β線の感度が高い),
パンケーキ型GMの機種はあまりありません.
入手性などを考えれば,表面汚染用としてPM1405が一番の選択肢になりそうです.
(RD1008 はβ・γ同時計測ですが入手困難ですし,Inspector+ も入手困難,TERRA はパンケーキ型ではないのでγ線測定向きです.)
また,PM1610 のPC連携機能が充実しているのは意外でした.
リアルタイムでPCで線量をみれたり,定期的に記録する機能がついたものは他の機種ではほとんどないかと思います.
本体は表面汚染向きですが,この部分では据え置きで線量を記録するとか,線量のリアルタイム配信などにも使えます.
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
PM1405のβ線測定機能に相当するものはありませんが,γ線は同じように測定できますので,
測定器1台しか持っていない場合には安心できる良いサービスだと思います.