放射線測定器 Polimaster PM1703MO-1 を
たろうまる
さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.
以前
たろうまる
さんから,Polimaster の測定器を何種類も貸して頂いておりますが,
今回は PM1703MO-1 をレビューさせて頂けることになりました.
購入を検討される方は,たろうまるさんの PM1703MO-1 ページをご覧下さい.
PM1703MO-1 はCsIシンチレーション検出器とガイガーミュラー管の両方を搭載した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
届いたものは次の写真のようなものです.
右側の写真にあるCD-ROMと同じくらいのサイズの説明書が英語のメーカー製ものです.
左側の写真にあるように,たろうまるさんオリジナルのかんたん説明書と,和訳された説明書が付属しています.
かんたん説明書は,基本的な使い方がわかりやすく説明されています.
外観は上の写真のような感じです.
この機種は数値が1行で,かなり大きく表示されます.
背面にクリップが付いています.
+の形の溝がある蓋をコインで回すと,電池を入れる場所があります.
ここに単3電池を1本入れておけば,1000時間使うことができます.
大きさはこのくらいです.
感度が高い機種ですが,小型です.
Polimaster PM1703MA,堀場PA-1000 Radi と並べるとこのような感じです.
左から,PA-1000 Radi・PM1703MO-1・PM1703MA になります.
PM1703MAとは同じ大きさです.
画面は次のような感じです.
左から,探索モード,DER(線量率)モード,DE(積算線量)モードです.
探索モードとDER(線量率)モードでは,アラームの鳴り方が異なります.
探索モードでは,バックグラウンド線量より高くなると,その違いに応じて段々激しくアラームが鳴ります.
DER(線量率モード)では,設定した2つの閾値を超えると,それぞれ2段階でアラームが鳴ります.
電源ON後の様子を撮影しました.
CAL表示の時は,バックグラウンドの線量を測定しています.
その測定結果を元に,自動的にアラームを鳴らす線量が設定されます.
電源は,ライトボタン長押し→OFF表示になった後,モードボタンを押す,で切れるようです.
(画面はOFF表示のままになります)
PM1703MO-1 はエネルギー補償があります.
PolimasterのPM1703MAやPM1621などの機種は,線量率が大きく変化しなければ,長い時間を掛けてより正確な数値を表示しようとするタイプですが,
この機種は少しロジックが異なり,比較的短い時間での線量率を表示する印象です.
数値は少し安定しにくくなりますが,その場所の線量率が短時間で反映されるのがメリットです.
アルゴリズムとしては,スペクトルも取れる上位機種の PM1703MO-1A/B と同等のようです.
放射線源を近づけて反応速度を撮影しました.
まずは探索モードの動画です.
Cs-137 線源と,複数線源を近づけています.
反応速度はとても素早いです.
探索モードでは,素早く反応して,線量率に応じてアラーム音が多段階に変化します.
ホットスポットなどを歩いて通過してもしっかり検出できる性能だと思います.
高感度の検出器で素早く反応する上,表示される線量がエネルギー補償されたものなので,大変使い勝手は良いと思います.
次は線量率モードの動画です.
線量率モードでは,PCから設定した2段階の閾値によって切り替わり,1段階目でピッ…ピッ…という感じ,
2段階目でピッ…ピピッ…という感じのアラーム音になります.
動画は,1段階目を1μSv/h,2段階目を10μSv/hに設定した状態で撮影しました.
マニュアルから引用すると,探索モードでは以下のようなエネルギー特性になっています.
低エネルギーでは,4.5倍ほど高感度であることがわかります.
PM1703MO-1 には,PM1703MO Series Data Processing Software が付属します.
このソフトウェアで,設定変更と,本体内に記録したイベントの参照を行うことができます.
積算線量のリセット・電源オフもこのソフトから行う形になります.
PCとはIRDAで通信します.
IRDAアダプタの近くに線量計を置いて,ライトボタンを押して通信を開始します.
ソフトウェアは正式には64bitに対応できていないようです.
購入時に注意が必要です.
PCから測定器の設定変更を行うと,以下の画面になります.
1画面目は,機器の名前・シリアル番号,測定器側の時刻,校正日時が表示されます.
2画面目で,アラームの閾値を設定します.
線量率モード用に2段階,積算線量でのアラーム設定,
探索モードでのアラームの感度を設定できます.
探索モードの感度は,どのくらい少しの変化でもアラームを鳴らすかの指定ですが,
敏感に設定しすぎると,放射線のランダムさのゆらぎでアラームが誤動作することがあります.
通常はデフォルトの値から変更する必要は無いと思います.
線量率モードのアラームは,自分が危険だと思う閾値を設定しておくと良いかもしれません.
探索モードはかなり敏感に反応するので,建物の屋内から外にでたときにもなることがありますし,
自動車などで移動していると反応しすぎると感じる場合があるかもしれません.
そのような場合は,アラームをならしたい線量をここで設定しておき,線量率モードにすると良いと思います.
ログ記録の間隔(最短10分)と,バイブレーション・アラーム音などの設定が出来ます.
以下のようにイベントを閲覧できます.
2000ポイントのメモリ容量があり,設定した一定時間ごとに線量率・積算線量を記録できる他,アラームが鳴った時刻も記録されます.
最短で10分間隔の記録のようで,1分に設定しようとしても強制的に10分に修正されてしまいます.
DER(線量率),DE(積算線量)のそれぞれをグラフで見ることも出来ます.
次は線量率のグラフです.0.00004の線が0.04μSv/hで,そこより下にあるのは鉛ブロックの中に入れていたためです.
この部分が0.00μSv/hになります.
ちょっと低線量すぎるためか,グラフの縦軸が少し微妙です.(^^;
以下は積算線量です.このような形で徐々に増加していくグラフになります.
上のグラフを見ているときに,気づきましたが,途中で積算線量が減っています.
拡大すると以下のように確かに減っていました.
ログで見てもこのように減少しています.
積算線量ですから,減少するのはおかしいのですが,以下のような原因ではないかと思います.
(わたしの推測ですので,誤っている可能性もあります.)
PM1703MO-1 は,エネルギー補償されているGM管と,エネルギー補償されていない(たぶん簡易エネルギー補償はされている)
CsIの2種類の検出器を持っています.
線量率を表示する場合,0.3μSv/h以下では感度の高いCsIを使って,それ以上ではGM管を使って線量率を表示しています.
しかし,積算線量は素早く反応する必要は無いので,常にエネルギー補償有りのGM管で測定を行っているのではないかと推測します.
GM管の方は,低線量では自己ノイズの影響が無視できません.
以下のように,GM管ではだいたい0.03μSv/h程度の自己ノイズが有ります.
参考:ガイガーカウンターの自己ノイズ 第3回 (2011/10/24)
しかし,この0.03μSv/hのノイズをそのままにしては,1日あたり0.72μSv,1年で263μSvもズレが生じてしまいます.
そこで,積算線量を計算するときに,自己ノイズ分として,0.03μSv/hなど,一定量を引いているのではないかと思います.
測定器によって自己ノイズは微妙に違いがあると思いますが,差し引く線量率より自己ノイズ量が少なかった場合,
線量率をマイナスとして判断してしまうのだと思います.
それをそのまま積算線量に加算したため,このように数字が減少することになってしまったのだと思います.
数値が減るのはおかしい感じがしますが,自己ノイズを引き算しないよりはずっと正しい数値になっているはずですので,
数値自体の信頼性は何も対策しない測定器より高いと思います.
イベントはファイルに保存することができ,保存すると次のようなフォーマットになります.
History list [ PM1703MO N00000000 ]
Date Time Event Value
2011/10/24 22:51:51 Background DER 0.05 uSv/h
2011/10/24 22:51:51 Accumulated DE 5.23 uSv
2011/10/24 22:52:51 Accumulated DE 5.23 uSv
2011/10/24 22:52:51 Background DER 0.05 uSv/h
2011/10/24 22:53:14 Signal. is changed vibro -> off;
2011/10/24 22:53:18 Alarm 0.05 uSv/h
2011/10/24 22:53:19 DER threshold 1 is exceeded 1.20 uSv/h
2011/10/24 22:55:09 Background DER 4.19 uSv/h
2011/10/24 22:55:09 Accumulated DE 5.32 uSv
PM1703MA と同時に持ち歩いていますが,この2機種で比べると,だいたい PM1703MO-1 の方が0.01μSv/hほど低い数値を示します.
線量率が変化したときは,PM1703MA は上昇は素早く,下降はゆっくりになります.
0.02μSv/hくらいの変化の場合,数分以上かかる場合もありますが,PM1703MO-1 はそのような特性は無く,すぐに反映されるようです.
PM1703MA の場合は,その場所の線量率にするためには,電源OFF/ONなどが必要ですが,PM1703MO-1 は上昇も下降も素早く変わるようです.
いろいろな場所で測定値を測るような場合は,PM1703MO-1 の方が使い勝手が良いと思います.
PM1703MO-1 をしばらくの間借りましたが,PM1703MA と同様,コンパクトで使いやすい機種という印象です.
スペクトル測定が出来る PM1703MO-1A/B から,スペクトルなどの機能を除いた機種という感じですが,
価格も安く,バランスが取れた機種だと思います.
高感度による汚染探索ができ,なおかつエネルギー補償有りでの積算線量も測定できますので,
1台目の放射線測定器として,お勧めしやすい機種です.
また,PM1703MA では探索モードではμSv/h表示ではなく,μSv/h表示にするとアラームが鳴らなくなるので,
その点でもPM1703MO-1は良くなっています.
(μSv/h表示のままアラームが鳴ります.)
高感度の機種では反応速度を優先するために,低線量では線量率の表示が安定しない場合もありますが,この機種は線量率の表示が安定しているのも良いところです.
この辺はPolimaster製品のソフトウェア的なノウハウが生かされているのだと思います.
PM1703MA のように,線量が下がったときになかなか反映されないと言うこともありませんし,
逆に数値が良くぶれるということもなく,ちょうど使いやすい具合に調整されている印象です.
また,積算線量に対応していること,ログ記録ができることも良い点です.
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
PM1703MO-1 の代わりにはなりませんが,測定器1台しか持っていない場合には安心できるサービスだと思います.