@drnamichan さんより,所有の RadEye PRD-ER を使ってみますか?とお声がけ頂きました.
ありがとうございます.
お借りした RadEye PRD-ER の使用感などをまとめてみました.
RadEye PRD-ER は NaI シンチレーション方式の放射線測定器です.
特徴としては,
お借りしたものは次の写真のようなものです.
写真の右上に校正証明書が付いていますが,この中に日本語の簡易操作説明書もありました.
単4電池2本で600時間動作します.
本体はプラスチック製ですが,堅めのゴムでできたカバーが付属しています.
電池を入れた後,通常はこのカバーを付けて使うようです.
カバーを付けた状態での大きさは下のようになります.
少し厚みはありますが,小型です.
カバーを外すと以下のようになります.
カバーが無いと,置いたときには少し傾いてしまいます.
マニュアルの最後にエネルギー補償・方向特性などの資料が記載されています.
電子データではないので引用はしませんが,次のような内容となっています.
この機種は素早く反応することに重点を置いているようです.
サンプリング時間は次のようになっています.
cps | サンプリング時間 |
---|---|
~150 | 16秒 |
150~400 | 4秒 |
400~ | 1秒 |
このほか,バックグラウンド線量のフィルタ(後述するSigma-Alarmの評価)は64秒, NBRについては30秒かけて計算しているようです.
動作画面は次のようになります.
この4画面遷移がデフォルトの cps モード表示ですが,その他に Dose Rate 表示をデフォルトにしたり,レベル表示にすることもできます.
最初は一番左のcps画面です.
基本的には汚染箇所を探す目的で設計されているようで,標準の画面はcpsです.
画面下のバーが現在の線量で,上下の△はアラームの位置です.
上が1段階目,下が2段階目のアラームです.
これによって,アラームまでの線量などが直感的に把握できるのが良いですね.
Infoボタンを押す毎に画面が切り替わり,2画面目で線量率,3画面目で積算線量,4画面目でピークと平均の表示画面になります.
設定画面で,Dose Rate 表示モードにすると,画面は以下のようになります.
cps 画面がなくなり,線量率画面,積算線量画面,ピーク・平均画面の構成になります.
設定画面で,レベル表示モードにすると,画面は以下のようになります.
レベル画面,積算線量画面,ピーク・平均画面の構成になります.
~16cpsはレベル0,~32cpsはレベル1,~64cpsはレベル2,のようにレベル分けで表示されます.
判定基準となるのはcpsのようです.
(エネルギー補償されるので,低エネルギーの場合,cpsの方が高く表示されやすくなります)
電源投入後の様子を撮影しました.
電源投入後に即座にcpsが表示されるのは素晴らしいです.
右上にLearningが出ている間は,バックグラウンド線量を測定しています.
この測定結果を元に,アラーム線量を設定します.(後述するSigma-Alarm)
バックグラウンド線量の測定中もちゃんと機器が利用できるのは良いですね.
下矢印キーを1回押すと,画面が逆さになります.
腰に付けているときなど,そのまま画面を見ると逆さになりますから,
そのようなときに便利だと思います.
RadEye PRD-ER には2種類・2段階のアラーム機能があります.
線量率用のアラームと,積算線量用のアラームがあります.
発生したアラームは,後から設定画面の Show alarm を選ぶ事で,
再確認することができるようになっています.(上記中央の画面)
線量率用・積算線量用のアラームは,それぞれ2段階で設定できますが,
線量率用の1段階目のアラームはSigma-Alarm機能を選ぶことができます.(右の画面)
固定した閾値では無く,バックグラウンド線量からの変化率でアラームを鳴らすことができます.
Sigma-Alarmのレベルが低いほど,少しの線量変化でアラームが鳴りますが,その代わり誤ってアラームが鳴ってしまう可能性が増えます.
デフォルトでは6になっており,上記の画面では,31cpsが閾値になっています.
Sigma-Alarm機能はオフにすることもでき,その場合は2段階の固定値での設定ができます.
線源を近づけて,反応速度とアラームの鳴り方を撮影しました.
最初にCs-137線源を近づけて1段階目のアラーム,その後複数の線源を近づけて2段階目のアラームを鳴らしています.
アラームはかなり素早く反応します.
画面下のバーには,現在の線量と,△で1段階目・2段階目のアラーム位置が表示されています.
(2段階目の下の矢印は撮影角度の都合で半分欠けてます)
この機種は線量に応じてサウンドを鳴らすことができるのですが,
Single と Finder という2種類の方法を選ぶ事ができます.
ちょっと変わった機能ですが,それぞれのモードで線源を近づけて音を鳴らした様子を撮影しました.
線量の高さを音のクリック音の頻度で表すモードです.
わたしはこちらのモードが直感的に分かりやすいと感じました.
線量の高さを音の高さにするモードです.
cpsの検出が少しふらつきますので,それに合わせて音の高さもふらつき,ちょっと不思議な感じです.
NBR機能によって,画面上に「Low Eng.」「High Eng.」「Balanced」の3種類が表示されるようです.
医療放射線など,低エネルギーの人工放射性物質なら Low Eng.
600keV以上の人工放射性物質なら High Eng.
自然放射線・バックグラウンドなら Balanced
と表示されるようです.
手持ちの線源で,実際にどのように表示されるか確認してみました.
核種 | 代表的なエネルギー | RadEye PRD-ER 画面表示 | テクノAP TA100でのスペクトル |
Cs-137 | 32keV 661.6keV |
||
Ba-133 | 122.1keV | ||
Cd-109 | 88.0keV | ||
Co-60 | 1173.2keV 1332.5keV |
||
Mn-54 | 834.8keV | ||
Na-22 | 511.0keV 1274.5keV |
Mn-54 は人工的な放射能なので,Balanced なのはちょっと不思議ですが,
対応していない可能性がありそうです.
核種分析機能などを搭載する機種を見ると,Mn-54 は分析可能リストに入っていないことが多いようですので,
何かほかのものと誤判定しているのかもしれません.
その他の核種は,上手く解析できています.
雨の日の線量増加などは,Balanced になりアラームが抑制できるのだと思いますが,
自然放射線量がうまいこと増えてくれないと判断できないため,確認できていません.(^^;
GM管を利用したガイガーカウンターの場合,自己ノイズがあってある程度の線量が上乗せされることがあります.
RadEye PRD-ER にはそのような物があるのか,5cm厚の鉛ブロックで周囲を囲んでみました.
ただ,この機種はサンプリング時間が短いので,八方を囲んでしまうと線量が確認できません.
そこで水平方向に窓をあけて,そこから中を見る形で確認したところ,0~1cps,0.00~0.01μSv/h の表示でした.
完全に塞げていないことを考えれば,自己ノイズのようなものでの測定値のズレは無さそうです.
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
この機種は他に比べると低めの数値に見えるのですが,マニュアルを見る限り綺麗にエネルギー補償されており,正確な線量値なのではないかと感じます.
比較対象がエネルギー補償無しのシンチレーションタイプの機種と,エネルギー補償有りのガイガーミュラー管の機種で,
エネルギー補償有りのTA100と比較できなかったため,はっきりしたことは分かりませんでした.
ガイガーミュラー管の機種は少し高めにでる傾向があるようなので,そのことを考えるとRadEye PRDの数値が実際の線量に近いのではないかと思います.
測定しているわたしの近辺はあまり汚染がなく,低エネルギーのバックグラウンド線量が中心です.
低エネルギーが高感度であるシンチレーション機種は,エネルギー補償がないと数値が高く出る傾向があります.
それによって差が出たのではないかと思います.
@drnamichan さんよりお借りして色々試させていただきましたが,
しっかりした作りである印象です.
特にマニュアルには,方向特性・エネルギー補償についてのグラフがきちんと記載されており,
表示される線量が正確であろうと感じさせてくれました.
小型で,高感度の機種で,なおかつエネルギー補償がちゃんとされている機種…というと選択肢がほとんどないのですが,
それらを全てクリアする良い測定器だと思います.
(値段の方も結構高いですが(^^;)
空間線量率を見るときは,サンプリング時間が小さいために少し数値がぶれますが,ぶれる範囲は狭いので,
画面を見ていれば平均値がどの程度かは十分把握できます.
積算線量も測定できますし,小さい測定器を1台もって,万能に使いたい,という目的にはベストな機種だと思います.