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放射線測定器 テクノAP TA-100 レビュー

スペクトル表示・核種分析ができる放射線測定器 TA-100 を購入しましたので, 使用感などをまとめました.

テクノAP TA-100 について

TA-100 はCdTe検出器を使用した放射線測定器です.

特徴としては,

スペクトル表示・核種分析
スペクトル表示と,核種分析機能があります.
スペクトル表示・核種分析機能が付いた測定器としてはとても安価な製品です.
ただし,対応している核種は全11種類と少し少なめです.
(Cs134,Cs137,I131,Co57,Co60,Xe133,Tc99m,Te132,F18,Am241,Pb212)
CdTe検出器による高いエネルギー分解能
放射線のエネルギースペクトルを見て,核種分析をするときは,エネルギー分解能が重要になります.
Cs134/Cs137など近いエネルギーを出す核種を区別するには,エネルギーの小さな違いがよりはっきりわかる, エネルギー分解能の高いものが有利です.
よく使われる NaI や CsI に比べ,CdTe はエネルギー分解能が高いのが特徴です.
エネルギー補償有り
エネルギー補償された線量率を確認できます.
カタログによると512段階とあるので,スペクトルから計算で求めているようです.
800cpm/μSv/hの感度
同価格帯の HORIBA PA-1000 Radi や Mr.Gamma A2700 に比べると低いですが, 一般的なガイガーカウンターよりは高い感度を持っています.

こちらに日本語マニュアルがあります.
参考:日本語マニュアル

内容物

届いたものは次の写真のようなものです.

専用のケースの中にしまえるようになっています.
また,内蔵充電電池で動作するので,USBの充電器が別途付いてきます.

大きさはDSより小さいくらいですが,厚さがかなりあります.

本体の下の部分には,ストラップをつけるための穴があります.

本体は少し柔らかいカバーに最初から入っています.
カバーを外すと銀色の検出部分が見えますが,薄いアルミのため, 普段はカバーをつけた状態で使う必要があるようです.

測定の様子

TA-100 の測定中の様子を撮影しました.

電源ON後の様子

数値が表示されるまでに,約15秒かかります.
また,バージョンは1.00でした.

時定数AUTOの場合は,10秒,30秒,60秒から自動切り替えとなるようです.
低線量なので60秒になっていると思いますが,計測開始時は過去の分は0として計算するようで, 数値が落ち着くまでに60秒かかるようです.

時定数は,手動では3秒,10秒,30秒,60秒,90秒と切り替えられますので, 低線量で正確に測りたい場合は90秒を手動設定すると良いようです.
それでも結構ふらつきますので,その場合は手作業で平均する必要がありそうです.
(時定数3分,5分,10分,15分,30分くらいを追加して貰えると嬉しいのですが…)

Cs137の核種同定

Cs137の密封線源を核種同定してみました.
最初に線量率を測定しています.およそ0.55μSv/hの状態です.

スペクトル画面に切り替えると,少しずつスペクトルができていきます.
約1分毎にピークサーチが行われ,そのときに核種が表示されます.
動画の2:33でCs137が検出されました.

Co60の核種同定

同様にCo60の密封線源を核種同定してみました.

Co60はCs134とエネルギーが近いためか,Cs134との誤判定が見られました.

また,撮影中にCALIBRATION画面になりましたので,その様子も確認できます.
CdTeショットキタイプ半導体検出器では,高分解能を維持するためにキャリブレーションが必要なようです.
突然画面が切り替わり,30秒強は操作不能になるので,少し不便です.

メニューと画面

画面は主に次の4種類で,MENUボタン長押しで切り替えます.

左から,線量率測定(+積算線量表示),スペクトル表示(+核種同定),アラーム設定画面,積算線量リセット画面,となっています.

通常は線量率測定とスペクトル表示をよく切り替えることになると思いますが, モードを切り替えると測定中のデータはいったんリセットされます.

スペクトル表示画面には,全体の線量率を表示する機能はないので,スペクトル測定中は線量率が見れません.
線量率画面を時定数60秒や90秒で使う場合,スペクトル画面から戻ってきたら,また60秒・90秒またないと数値を読み取れません.
ここは少し不便です.

スペクトル表示画面に切り替えると,スペクトルの測定を開始します.
その後1分ごとくらいにピークサーチ処理が行われて,そのときに核種同定がされます.
核種同定すると,その同定された核種のピークの上に太い線が表示され,選ぶとエネルギーとその核種の線量率が表示されます.
複数のピークがある場合は,切り替えて順次確認できます.

なお,マニュアルによると,電子回路の安定を待つために,電源を入れてから3分以上たってからの測定が推奨のようです.

スペクトル画面は,拡大表示ができ,ENTERボタンを押す毎に,
全体表示→2倍拡大の1画面目→2倍表示の2画面目→4倍表示の1画面目→…→4倍表示の4画面目
と切り替わります.

全体表示
2倍表示
4倍表示

また,ENTER長押しで縦軸をログ表示,リニア表示に切り替えることができます.

スペクトル解析結果

手持ちの密封線源のスペクトルを測定してみました.
(GS-1100Aレビュー時に取得したものです)

Cs137
661.6keV
Co60
1173.2keV
1332.5keV
Ba133
122.1keV
Mn54
834.8keV
Na22
1274.5keV
Cd109
88.0keV

破棄に関する注意

TA-100はCdTeを使用しているため,一般ごみとして捨てることはできないようです.
破棄・回収方法はテクノAPまで連絡くださいとマニュアルに記載があります.

使用感など

有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイは室内ではとても見やすいのですが, 直射日光があたるような屋外では結構みにくいようです.

逆に夜は光って非常に見やすいですが,一般的には昼間に外で測定する事の方が多いと思いますので, どちらかといえば欠点になりそうです.

測定値のぶれ

測定値のブレが結構大きいと感じます.
手動で時定数90秒で測定をしていますが,平均を計算すると誤差がかなり大きくなります.

γ線測定値の比較ページの方でリンクをクリックすると,実際の測定データをみれますので,そちらを参照してください.
PA-1000 Radi はカタログスペック上は感度2.5倍ですが,測定値をみているとそれ以上の差があるように感じます.
Radi の方は実際のスペックがカタログスペックより高めなのかもしれません.

誤動作

衝撃を与えた場合と,携帯電話を側で使ったときに誤動作するようです.

衝撃は少しあがるくらいしか確認できていませんが,携帯電話はちょうど良い位置で通信を行うと, 10μSv/hくらいまで簡単にあがりました.
Twitterでは1000μSv/hまでいったという話も見ましたので,もう少し検証して動画などアップしたいと思います.

ファームウェアアップデート

測定値のぶれの改善ファームウェア

測定値のぶれについて,ファームアップで改善するようです.

テクノAPのTA-100のページに以下の記載がありました.

2011年9月下旬から10月初旬頃出荷するTA100は、ファームウェアをVer1.1へ更新予定です。
既にTA100を購入頂いている方へは、今回無償でバージョンアップをさせて頂きます。
弊社までの送料はご負担頂けますよう宜しくお願いいたします。
受付開始時期につきましては、後日弊社ホームページにて発表させて頂きます。

【Ver1.1ファームウェア変更予定内容】
・線量率の変動をおさえたモードを追加。
・振動対策アルゴリズムの追加。

もしかしてアルゴリズムの実装上,変動しやすい要素があったのを解消するのか, 時定数のより長いものを用意してくれるのかは不明ですが,期待できそうです.

またアップデートしたらレビューに追加したいと思います.

更に,有料ですがUSB接続機能も開発中のようですね.
あまり高くなければこちらも購入しようと思っています.


<9/16追記>

USB通信機能のファームアップデートは21,000円になったようです.
預かり期間を問い合わせたところ,数日~1週間くらいとのことです.

ファームアップ完了

ファームアップを行い,TA100U(USB機能付きモデル)となって戻ってきました.

追加された機能は以下の通りです.

振動マスク機能
ONにすると振動などの影響を受けにくくなるようです.
0.3μSv/h以上など,比較的高い線量の場合はOFFにする必要がある上,スペクトルモードを利用するときもOFFにする必要があるそうです.
線量率計算フィルターにエネルギー補償無しのものが追加(低線量での線量率変動を抑える)
今までは,時定数AUTO(10秒・30秒・60秒自動切替)と,3秒・10秒・30秒・60秒・90秒 での切り替えでした.
今回のファームアップで,今までのエネルギー補償有りのモードに加えて,エネルギー補償無しの60秒・90秒が追加されました.
エネルギー補償有りは EAT・E3・E10… のように表示され,エネルギー補償無しは C60・C90 と表示されます.
エネルギー補償無しだと線量率の変動が抑えられるようです.
USB通信機能
PCと接続し,線量率のグラフ表示・スペクトル表示が可能になりました.

線量率計算フィルターの改良

線量率計算フィルターにC60・C90が追加されました.
こちらだと線量率の変動が抑えられるとのことですが,どうやらエネルギー補償有りは今まで通りのようです.

測定するときはエネルギー補償有りの値を知りたいわけですから,これはちょっと期待はずれでした.

PC連携機能を使ってグラフを取得したところ,次のようになりました.
上がエネルギー補償有り・下がエネルギー補償無しで,30分ほどバックグラウンドを測定した結果です.

見るときは左の軸が違うことに注意して下さい.
確かにエネルギー補償無しでは少し安定しているようです.

PC連携機能

USB接続でPC連携ができるようになりました.

線量率表示と,スペクトル表示ができます.

まず使ってみて感じたことは,大変不安定ということです.
よく画面の更新がとまったりしますし,上記の線量率の表示のグラフでも時々データの取りこぼしが有り,設定した1秒ごとには取り込めていません.

ポート番号の設定も記憶されず,起動するたびにエラーが出て,ポート番号を設定の上,メニューから再接続を選ぶ必要がありました.

この辺については今後のバージョンアップに期待したいです.

線量率表示は上記のようなグラフが確認できます.
スペクトルモードは,PCの広い画面でスペクトルを見れる上,カーソル位置のエネルギーを確認したり,カーソルで挟んだ場所のカウント数などを計算する機能があります.
(こちらは後日追記したいと思います)

γ線測定値の比較

他の機種と表示値については随時比較していきます.

測定値の実際の値の比較は別ページにまとめています.そちらを参照してください.
放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較

まとめ

エネルギー分解能が高いCdTe素子を搭載したスペクトル専用機…として使うのが良さそうです.

残念ながら,線量率の表示においては,数値が大きくふらつき,使い勝手が良くありません.
800cpm/μSv/hの感度に見合うぶれではないので,処理のロジックに問題があるか,CdTe素子をうまく扱えていないのかもしれません.

CdTe素子は日本の技術で,かなり高感度&高分解能のようです.
他メーカーでは採用例があまりないようですし,いち早く取り組まれて開発したというテクノAPの姿勢は応援したいです.
スペクトル面でのメリットはありますので,TA100はスペクトル用と考えて,線量率の評価には別の測定器を利用するのが良いかもしれません.

スペクトル表示ができる機種としては,20万円以下で,本体でも表示ができるので,コストパフォーマンスも良いと思います.
(他機種ではだいたい40万円以降くらいだと思います)

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