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ガイガーカウンター GAMMA-SCOUT レビュー

ガイガーカウンター GAMMA-SCOUT を, ワンダーランドショップさんから,無償でお借りすることが出来ましたので, 使用感などをまとめてみました.

GAMMA-SCOUT について

GAMMA-SCOUT はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.

特徴としては,

αβγ・βγ・γ線測定モードの切り替え
レバー操作で,αβγ線全ての測定,βγ線の測定,γ線のみの測定を切り替えることができます.
それぞれでカウント数の差を計算することで,α線・β線・γ線それぞれの量を知ることができます.
タイマー機能
一定時間を設定し,その間の積算線量やカウント数を記録することができます.
時間を掛けてより正確な線量率を求めたり,少ないα線やβ線を検出したいときに活用できます.
線量率の記録機能
線量率を最短1分間隔で本体メモリに記録できます.
約700ポイント程度まで記録できるようで,1分間隔なら約10時間分記録可能です.
(10分間隔で4日分,1時間感覚で4週間分,1日間隔で2年分ほど記録できます.)
記録したデータはPCに接続して読み出し,CSV保存したり,グラフで確認することが出来ます.

内容物

お借りした GAMMA-SCOUT のパッケージと,その内容物です.
GAMMA-SCOUT の上に写っているのは,PCとの接続ケーブルです.

単3電池が入っていますが,バッテリー交換はサポートに依頼して交換するとあり, 自分でやらないでくださいとマニュアルに書いてあります.
ワンダーランドショップさんに確認したところ,販売した方がおまけに入れてくれたようです,とのこと.(^^;

PC接続や音を出すと電力消費が大きくなりますが,そうでなければ10年持つので, 通常電池の交換は不要のようです.

本体は,このような感じです.
上に測定する放射線をαβγ,βγ,γと切り替えるためのレバーがあります.
ボタンは10個あり,放射能マークを押すと線量率表示画面になります.

大きさ

DSiより一回り大きいくらいのサイズです.
高さはありますが,細身なので持ちやすい形状です.

手持ちの PA-1000 Radi と PM1703MA と並べてみました.
幅・厚さはRadiと同じくらいで,少し縦に長い感じです.

測定器の窓部分

GAMMA-SCOUT は本体上部のレバーを操作することで,GM管に入る放射線を切り替えることができます.

写真左のように,中央にレバーをあわせると,γ線のみが測定できます.
このときは,銀色のフィルタが見えます.

写真右のように,右にレバーをあわせると(写真では逆さなので左),β線とγ線が測定できます.
アルミニウムホイルでα線のみがカットされるようです.

次のように,左にレバーをあわせると(写真では逆さなので右),α線・β線・γ線全てが測定できます.
このときはGM管が見えます.
α線を検出するGM管は薄い膜でカバーされているので,触ったりしないように注意が必要です.

機能

GAMMA-SCOUTはいくつかの測定モードが有り,本体のボタンで切り替えます.
1ボタンに1~2機能が割り当てられているので,目的の機能にはかなり素早くアクセスできます.

また,画面下には線量率のバーグラフが常に表示されます.
モードを切り替えている間も,おおよその線量率をバーグラフで確認できます.

日付/時刻ボタン(左上)
日付・時刻を確認できます.
パルス測定タイマーモード(中央上・1クリック)
時間を設定して,その時間のパルス数を測定するモードです.
このモードが一番よく使うことになるのではないかと思います.
時間は,パルス測定タイマーモードにした後,中央右のキーで1時間単位・1分単位・1秒単位を選んでから, 右上・右下の△ボタンで時間を設定します.
時間設定後,パルス測定のボタンをもう1回押すと,測定が開始され,設定時間経過後にカウントが止まります.
パルス測定モード(中央上・2クリック)
パルス測定ボタンを2回続けて押すと,タイマー関係無くずっとパルスをカウントし続けるモードになります.
バッテリー電圧(左中央・1クリック)
バッテリー電圧を確認します.
ティッカーON/OFF(左中央・2クリック)
ティッカーというのは,放射線を検出したときにピッとなるビープ音のことです.
ONにすると,放射線検出毎に音が出るので,汚染を探すときなどには便利だと思います.
ただし,バッテリーを1000倍ほど消費するとマニュアルに書かれており,長時間の連続使用には向かないようです.
(バッテリーは自分で交換できないため)
パルス率測定モード(中央)
パルス率を測定します.
1秒あたりのパルス数を表示します.
データ転送(左下・1クリック)
PCと接続して,ログデータを転送するときに使います.
ログ設定(中央下・1クリック)
本体メモリに,どのくらいの時間間隔でログを残すか設定します.
時間を設定すると,その時間ごとにパルスのカウント数を記録するようになります.
記録するのはその時点での線量率ではなく,その間隔でのパルス数となっているので, 線量率というよりは積算線量を記録している形になります.
たとえば1時間間隔にしたら,1時間に1回,その時点での線量率を記録するのでは無く, 1時間ごとに,過去1時間の平均の線量率を記録するようなログになります.
アラートレベル設定(中央下・2クリック)
アラートレベルの閾値を設定できます.
線量率モード(中央の一番下の放射能マーク)
線量率表示のモードです.
とりあえずこのボタンを押せば,標準の線量率表示画面になります.

他のモデル

GAMMA-SCOUT には,このほかにオンラインモデルも有り,そのモデルではPCと接続し, PC側でリアルタイムに線量率を表示できるようです.
今回お借りしたのはアラームモデルで,この機能は無いモデルです.

タイマー機能

GAMMA-SCOUT は,タイマーを使って一定時間のカウント数を測ることができます.
線量率のサンプリング時間は不明(おそらく60~90秒くらい)ですが,この機能を使えば好きな時間を設定して測定できます.
カウント数から線量率へは,1分間あたりのカウント数を90.1cpm/μSv/hで割り算すれば換算できます.

毎日同じ場所で1回測る,というような定点観測をする場合は,1時間など,長い時間を掛けて測定すれば,かなり正確に数値を測定できるので, 時系列で変化を追う目的にも利用しやすいと思います.

どのくらいの時間を掛ければ誤差がどのくらいになるかは,こちらでシミュレーションできます.
GAMMA-SCOUT の感度は「90.1cpm/μSv/h」なので,その数値を入れて,放射線量と計測時間を入力して下さい.
参考:測定値のぶれのシミュレーションツール

γ線の測定

数値のばらつき

感度が90.1cpm/μSv/hと低めであるため,低線量で使う場合はかなり数値がふらついてしまいます.
以下のグラフは2時間ほどの間,1分毎に線量率を読み取った場合のふらつき具合です.

低線量で測定する場合は,複数回,値を読み取り平均するか, タイマー機能を使い,5~15分くらいのカウント数を測定し,そこから線量率を計算で求める方が良いと思います.

タイマー機能を使う場合,例えば10分測定し,120カウントであれば,1分間あたり20カウントになります.
線量率は 20cpm÷90.1cpm/μSv/h=0.22μSv/h と計算できます.

線量率のばらつき具合から,サンプリング時間を逆算すると約80秒くらいになりました.
0.10μSv/hくらいで線量率が安定している場合は,過去80秒くらいの測定結果を表示しているようです.

線量率が変化すれば,もっと短時間で線量率を表示しますので, 線量率が変化したときは統計をリセットするようなロジックになっているようです.

自己ノイズ

鉛ブロックで囲って自己ノイズを測定したところ,0.07~0.09μSv/hほどありました.
そのためか,線量率も少し高めに表示される印象です.

参考:ガイガーカウンターの自己ノイズ 第3回 (2011/10/24)

他の測定器との比較

他の測定器との線量率を比較してみました.

以下に測定器毎の差についてまとめていますので,あわせてご覧下さい.
参考:線量率の変動比較・第8回 (2012/02/24)

反応速度

複数の密封線源を近づけたときの反応の様子を撮影しました.

以下の順序で試しています.

β線の測定

GAMMA-SCOUT はαβγ,βγ,γと測定対象を切り替えられますので, それぞれのモードで測定し,差を計算することで,α線・β線・γ線の量を知ることができます.

α線を出すような物はなかったので,βγとγで測定し,β線の量を計算してみました.

測定器はパルス測定モードを10分のタイマーにして,βγとγでそれぞれ測定を行いました.

この2回の測定の差を見てβ線があるか判断するわけですが,カウント数に差があったからといって, そこにβ線の汚染があると判断できるとは限りません.
放射線はランダムに出るため,実際には汚染がないにもかかわらず,たまたまばらついたせいで β線があるように見える可能性もあります.

そこで,統計的な計算を行い,判定を行うツールを使います.
以下のリンク先に使い方の説明を記載していますので,参考にしてください.
参考:放射線測定器(ガイガーカウンター)のカウント数の有意差計算ツールで差を検証する

使い方としては,単純に測定時間と,そのカウント数を記入し,計算させるだけです.
このとき,「危険度0.27%で差は有意?」に「有意差あり」と表示されれば,「汚染あり」と判断して良いと言えます.

また,p値というのが,汚染ありと判定したとしたときに,本当は汚染が無いのに,汚染ありと誤判定してしまう確率を表しています.
これが0%なら,確実に汚染ありと言えることになりますし,5%なら,5%の確率で本当は汚染がないのに汚染ありと判断するということになります.

以下の測定結果では,p値を記載しています.
これが 0.27% 以下であれば,一般的には「汚染あり」と判断できると言うことになります.
もし 0.27% 以上で,かつ小さめの数値である場合は,更に測定を行って,汚染があるかどうか調べることができます.

その場合は,ツールには合計の測定時間と,合計のカウント数を記入します.
例えば,10分測って,対象物なしで123,対象物あり155だったとします.
この場合は,p値は5.5%で,危険度5%でも有意差が無いという判断になります.
ツールでの計算結果

更に20分ずつ測定を重ねて,今度は対象物なしが251,対象物ありが313だったとします.
先ほどと合計すると,測定時間はそれぞれ30分,カウント数は対象物なしが 123 + 251 = 374,対象物ありが 155 + 313 = 468 となります.
同様にツールで計算すると,p値は0.12%となり,汚染ありと判断できます.
ツールでの計算結果

測定場所 γ線カウント数(A) β+γ線カウント数(B) 差のp値(B-A) コメント
鉛ブロックの上
107 118 46.3%
ツールでの判定結果
β線が明らかにない状態でゼロになるか,一応鉛ブロックの上で測定してみました.
p値も非常に高く,差があると言えない状態です.
若干β+γ線の方が数値が高いですが,たまたまの誤差の範囲と判断できます.
昆布
124 123 94.9%
ツールでの判定結果
乾燥昆布を測定してみました.
昆布にはカリウムが含まれているため,そのβ線を検出できるかな?と思ったのですが未検出でした.
他の測定器では測れたこともあったので,もう少し測定器に近づけたり,量を多くすれば差が出たかもしれません.
やさしお
123 152 8.0%
ツールでの判定結果
やさしおを測定してみました.
やさしおは,塩分の半分をカリウムに置き換えた塩です.
カリウムには天然の放射性カリウムが含まれるので,そのβ線を検出できるかな・・・と試したところ, p値が8.0%とありと検出できそうな雰囲気が見られます.
もう少し時間をかけて測定してみると,β線ありと判断できる可能性がありそうです.
2011年3月に使っていた吸気口フィルタ
137 148 51.5%
ツールでの判定結果
花粉がキャッチできるフィルタを部屋の吸気口につけているのですが, 3月頃に使っていたフィルタを交換後保存しておいたものを測定しました.
こちらはβ線を検出できませんでした.
ストロンチウム(Sr-90)線源
204 2258 0.00000000000000000000%
ツールでの判定結果
β線のみを出す線源です.
γ線が増えたのは,制動放射(β線が他の物に当たったときにX線(=γ線と一緒)がでること)のせいだと思います.
こちらは,はっきりとβ線が検出されています.
セシウム(Cs-137)線源
340 452 0.0069%
ツールでの判定結果
セシウムなのでγ線も増えますが,β線も出します.
こちらもはっきりとβ線を検出できたと言えます.
トリウム入りマントル
211 547 0.00000000000000000000%
ツールでの判定結果
最近はトリウム入りではないマントルも多いようですが,これはトリウムが入っている物です.
はっきりとβ線を検出できました.

PCソフトウェア

PCと接続することで,測定器で記録したデータを読み出すことができます.

ソフトウェアのインストール

付属ソフトウェアですが,同梱されていた CD-ROM では上手く動かず, ワンダーランドショップさんから別バージョンのソフトウェアを送って頂きました.

新しいソフトウェアで,Windows7 64bit 環境と,Windows Vista 32bit 環境で動作を確認できました.

履歴の読み出し・クリア

測定器の線量率は一定間隔で記録されています.
これをPCにダウンロードすることが出来ます.

ダウンロード後は,測定器側のメモリをクリアできます.
測定器のメモリの残りが少なくなると,自動的に記録間隔が1週間になります.

短い時間間隔で記録したい場合は,記録前にPCにログをダウンロードして, 測定器側のメモリをクリアしておく必要があります.

グラフ表示

履歴は付属ソフトでグラフ表示できます.
線量率・カウント数・積算線量の3種類を,2Dまたは3Dのグラフで確認できます.

記録データの保存

測定器から読み出した生データは,自動的に保存されます.

更に,集計した結果をCSV形式・テキスト形式で保存することができます.

テキスト形式の場合は以下のようになります.

-----------------------------------------------------------------------------
       Gamma-Scout    -- Calculation of Raw-Data --
-----------------------------------------------------------------------------
       "File : GAMMA_2012_02_20_22-28-54.DAT"
-----------------------------------------------------------------------------
The ID of your Gamma-Scout is : 000000
-----------------------------------------------------------------------------
Measurements with overflow
of the counter-tube
(max.1000 Microsievert per hour) are signed with '*'.

Measurements where the choosen interval was not terminated
are signed with 'x'.

[cps] means 'counts per second' (recognized impulses per second)
Rate      in [cps]            means 'counts per second'
This value represents the measured pulses per second.
Dose      in [microSievert/h] means 'microSievert per hour'.

-----------------------------------------------------------------------------
                                PROCESSED DATA :
-----------------------------------------------------------------------------
Nr. Range       from                to          Counts      Rate        Dose
-----------------------------------------------------------------------------
x1    Hour  09:57 19.04.10  09:58 19.04.10  0000000011  0.003   0.002 x
 2  Week    09:58 19.04.10  09:58 26.04.10  0000248960  0.412   0.268  
 3  Week    09:58 26.04.10  09:58 03.05.10  0000290048  0.480   0.312  
 4  Week    09:58 03.05.10  09:58 10.05.10  0000294400  0.487   0.317  
 5  Week    09:58 10.05.10  09:58 17.05.10  0000282368  0.467   0.304  
 6  Week    09:58 17.05.10  09:58 24.05.10  0000432640  0.715   0.466  
 7  Week    09:58 24.05.10  09:58 31.05.10  0000152192  0.252   0.164  
 8  Week    09:58 31.05.10  09:58 07.06.10  0000150656  0.249   0.162  
 9  Week    09:58 07.06.10  09:58 14.06.10  0000151168  0.250   0.163  
 10 Week    09:58 14.06.10  09:58 21.06.10  0000424960  0.703   0.458  
(略)
-----------------------------------------------------------------------------

CSV形式の場合は以下のようになります.

Notes :
1.Rate = average counts per second over interval
2.Type (interval) 0=week 1=day 2=hour 3=10min 4=min
3.GM tube overflow flag (*) or interval was interrupted(+)
Dose
Number,From,To,Counts,Rate,Type,Overflow Flag(*) or Interruption-Flag(+),Dose,
1,2010/04/19 9:57:00,2010/04/19 9:58:00,11,0.00305555551312864,2,x,0.00199059001170099,
2,2010/04/19 9:58:00,2010/04/26 9:58:00,248960,0.411640197038651,0, ,0.268169522285461,
3,2010/04/26 9:58:00,2010/05/03 9:58:00,290048,0.479576706886292,0, ,0.312427848577499,

まとめ

α線・β線・γ線の測定を簡単な切り替え操作で測れる数少ない機種の1つです.
特にα線まで測れる機種は少ないですから,その点を重視する場合はこちらの機種が選択しになると思います.

また,測定器本体は素直な作りで,タイマー機能やパルス数自体の表示など機能も十分有り,使い勝手は良いと思います.
バッテリー交換が出来ませんが,測定にのみ使えばバッテリー交換が必要無いほど持つのもメリットです.
その間,一定時間ごとにログを記録することも出来ます.

本体機能は大変良いのですが,一般的な使い方であるγ線の測定において,ちょっと感度が低いのが難点です.
タイマー機能があるので,上手く使うことで感度が低い部分をカバーできるとはいえ,ここが唯一残念なところだと思います.

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