asahi.comに『原発周辺住民は「ヨウ素剤飲むべきだった」 識者が指摘』という記事がありました.
asahi.com: 原発周辺住民は「ヨウ素剤飲むべきだった」 識者が指摘より引用
放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすく、甲状腺被曝では放射性ヨウ素の中では比較的、寿命が長い放射性ヨウ素131(半減期約8日)だけが考慮されていたが、広島大原爆放射線医科学研究所の細井義夫教授は「半減期が2時間と短いヨウ素132も考慮が必要」と指摘。理化学研究所などが3月16日に原発30キロ圏外の大気を分析した結果、放射性物質の7割以上が放射性ヨウ素132や、約3日で放射性ヨウ素132に変わる放射性物質だったという。
全体の7割がI132,3割がI131だとすれば,I131の2.3倍ほどのI132が存在することになります.
この量がベクレルなのか,シーベルトなのかが書いてないですが,普通に考えて大気の分析をしたなら,単位はベクレルだと思います.
もしそれが正しければ,ベクレルが2倍になっても,被曝量も2倍になるわけではないので,ヨウ素剤を飲むほどになる可能性は低いと思います.
ICRPの内部被曝の係数は次のようになっています.
放射性物質 | ~1歳 | ~2歳 | ~7歳 | ~12歳 | ~17歳 | 17歳以上 |
---|---|---|---|---|---|---|
経口摂取 | ||||||
I131 | 1.8E-07 | 1.8E-07 | 1.0E-07 | 5.2E-08 | 3.4E-08 | 2.2E-08 |
I132 | 3.0E-09 | 2.4E-09 | 1.3E-09 | 6.2E-10 | 4.1E-10 | 2.9E-10 |
吸入摂取 | ||||||
I131 | 7.2E-08 | 7.2E-08 | 3.7E-08 | 1.9E-08 | 1.1E-08 | 7.4E-09 |
I132 | 1.1E-09 | 9.6E-10 | 4.5E-10 | 2.2E-10 | 1.3E-10 | 9.4E-11 |
※例えば係数が1.8E-07なら,(ベクレル数)×(1.8×10-7)=(被曝量のシーベルト),という計算になります.Eの後の数値が1違えば被曝量は10倍変わります.
※吸入摂取は,F/S/Mの3種類の係数があるが,標準で使う推奨値のFの係数を記載しました.S/Mでも同じように1桁くらい差があります.
専門家が言っていることなので,何か他の理由もあってヨウ素剤飲むべきだったという結論なのかもしれませんが,
内部被曝の係数は資料があまり無いため,記事にまとめてみました.
追記:
Twitterで,積算100mSvになったらヨウ素剤適用,みたいな基準ではなく,瞬間的な被曝量のリスクを見て別の基準での話なのでは,という指摘がありました.
I131は実効半減期7.6日,I132は半減期が2.3時間ですから,短時間で見れば被曝量は変わってきます.
I131の場合,最初の1日で全体の9%,最初の1時間なら全体の0.4%です.
一方,I132の場合,最初の1日でほぼ100%,最初の1時間で26%被曝します.
10倍以上の差がありますから,経口摂取で考えるなら係数が1/10でも短時間で10倍の影響があるなら,
I131の2倍もI132があれば,実際は合計で3倍の被曝だった,ということになりそうです.
(吸入摂取だとそうはなりませんが…)
瞬間的な被曝量が問題になる(そしてその数値を元にヨウ素剤適用を判断する別の基準がある)なら,ヨウ素剤を飲むべきだった,
となるかもしれませんね.