@tokutokugeiger さんから Coliy RM600 をお借りすることができました.ありがとうございます.
(トクトクドットトゥーユーというサイトで測定器を販売されている方です)
Coliy RM600 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
お借りした Coliy RM600 は専用ケースに入れられていました.
中にRM600本体と,CD-ROM(マニュアル)・校正証明書が入っています.
本体の外観は以下のような感じで,大きなディスプレイに,4つオンボタンのシンプルな作りです.
背面の上の所に,GM管が入っています.
GM管の部分もケースで覆われており,GM管自体は見ることができません.
電池はねじ止め式になっていて,単4電池×3本です.
ねじ部分にもゴムのパッキン(?)が付いており,防水仕様となっています.
電源を入れると,線量率のグラフバーと,線量率が表示されます.
かなり大きな文字なので視認性が良い感じです.
RM600 は,DSの2倍くらいの厚さで,DSより一回り大きいくらいのサイズです.
そこそこの重さもあり,持った感じでも結構しっかりした測定器という感じです.
他の測定器とも比較してみました.
画面は次のような感じです.
まず,上のボタンを押すと,パルスカウントモードになります.
電源を入れた後,一番最初はタイマーパルスカウントモードになり,2度目からはタイマー無しのパルスカウントモードになります.
左がタイマーの設定画面,右がパルスカウント中の画面です.
(画面下が撮影の都合上で欠けてますが,表示されてるマークはこういう形です> _| ̄|_| ̄|_ )
下のボタンを押すと,線量率の単位が順次変わります.
右のボタンを押すと設定画面になります.
設定画面では以下の設定が行えます.
RM600 は,パルス数の画面で,タイマーを使って一定時間のカウント数を測ることができます.
タイマーは1~999分で設定することが可能です.
通常の線量率表示では,最大60秒での平均値表示ですが,この機能を使えば好きな時間を設定して測定できるので,より安定した(より正しい値に近い)線量率を知ることができます.
RM600は感度が350cpm/μSv/hですので,カウント数と測定時間からSv/hに換算できます.
たとえば,15分間測って100カウントなら,100÷(15/60)÷350=1.143μSv/h,20分測って50カウントなら,50÷(20/60)÷350=0.429μSv/h のように計算します.
毎日同じ場所で1回測る,というような定点観測をする場合は,1時間など,長い時間を掛けて測定すれば,かなり正確に数値を測定できるので,
時系列で変化を追う目的にも利用しやすいと思います.
どのくらいの時間を掛ければ誤差がどのくらいになるかは,こちらでシミュレーションできます.
RM600 の感度は「350cpm/μSv/h」なので,その数値を入れて,放射線量と計測時間を入力して下さい.
参考:測定値のぶれのシミュレーションツール(10分測定の例)
この機種は防水かつβ線測定可能なのが特徴ですが,β線も拾ってしまうため,
空間線量(μSv/h)を測定する場合,β線が入らないようにする必要があります.
空気中に放射性物質が舞っているような状況でなければ,地面や壁などから1m離れて測定すれば,
β線はほぼ届きませんので,だいたい正しい値が得られると思います.
地面などを測定する場合,β線を含むとμSv/hの数値は正しくなくなってしまうので,
数値の扱いには注意が必要かと思います.
ツイート等する場合は,誤解を招かないようにcps・cpmの単位を利用する方が望ましいかと思います.
参考:ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について
鉛ブロックで囲って自己ノイズを測定したところ,0.02~0.07μSv/hほどありました.
完璧な遮蔽ができているわけではないのと,鉛から出るβ線を拾っている可能性などもありますので,
目安にしかなりませんが,少し数値が高めに出ることがあると考えた方が良いようです.
参考:ガイガーカウンターの自己ノイズ 第3回 (2011/10/24)
密封線源を近づけたときの反応の様子を撮影しました.
動画ではサンプリング時間をデフォルトの32秒にしています.
β線への反応を確認するために,Sr90線源と,Cs137線源を近づけたときの様子を撮影しました.
隣には,γ線のみを検出する PA-1000 Radi を置いてあります.
放射線検出音の低い方が RM600,高い方が Radi の音です.
前半は Sr90,後半は Cs137 を近づけています.
RM600 は Sr90 にしっかり反応するのに対し,Radi は線量率が変わらないことが判ります.
RM600 は,タイマー機能付きパルスカウントモードがあるので,2回測定する事で汚染の有無を判定することができます.
2回の測定の差を見て汚染があるか判断するわけですが,カウント数に差があったからといって,
そこに汚染があると判断できるとは限りません.
放射線はランダムに出るため,実際には汚染がないにもかかわらず,たまたまばらついたせいで
汚染があるように見える可能性もあります.
そこで,統計的な計算を行い,判定を行うツールを使います.
以下のリンク先に使い方の説明を記載していますので,参考にしてください.
参考:放射線測定器(ガイガーカウンター)のカウント数の有意差計算ツールで差を検証する
使い方としては,単純に測定時間と,そのカウント数を記入し,計算させるだけです.
このとき,「危険度0.27%で差は有意?」に「有意差あり」と表示されれば,「汚染あり」と判断して良いと言えます.
また,p値というのが,汚染ありと判定したとしたときに,本当は汚染が無いのに,汚染ありと誤判定してしまう確率を表しています.
これが0%なら,確実に汚染ありと言えることになりますし,5%なら,5%の確率で本当は汚染がないのに汚染ありと判断するということになります.
以下の測定結果では,p値を記載しています.
これが 0.27% 以下であれば,一般的には「汚染あり」と判断できると言うことになります.
もし 0.27% 以上で,かつ小さめの数値である場合は,更に測定を行って,汚染があるかどうか調べることができます.
その場合は,ツールには合計の測定時間と,合計のカウント数を記入します.
例えば,10分測って,対象物なしで123,対象物あり155だったとします.
この場合は,p値は5.5%で,危険度5%でも有意差が無いという判断になります.
(ツールでの計算結果)
更に20分ずつ測定を重ねて,今度は対象物なしが251,対象物ありが313だったとします.
先ほどと合計すると,測定時間はそれぞれ30分,カウント数は対象物なしが 123 + 251 = 374,対象物ありが 155 + 313 = 468 となります.
同様にツールで計算すると,p値は0.12%となり,汚染ありと判断できます.
(ツールでの計算結果)
他の機種と表示値を比較してみました.
他機種と比べると,若干高めの線量率になるようです.
これは,β線に感度があるからかもしれません.
また,サンプリング時間を最大の60秒に設定しても,0.1μSv/hなどの低い線量率では,
少し数値のばらつきがあるようです.
低線量では,タイマー機能を使うか,複数回の測定結果の平均を取る必要がありそうです.
(β線を使った表面汚染用という設計のようですから,あまり線量率の計測は重視されていないのかもしれません)
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
線量率の変動比較・第9回 (2012/06/05)
Coliy RM600 は,防水でありながら,β線が測定できるガイガーカウンターなのが特徴です.
β線が測定できるガイガーカウンターは,大抵GM管をむき出しにして使うため,水はもちろん湿気にも弱いものです.
GM管自体に放射性物質が付着してしまうと,その後の測定が正しく行えなくなってしまいますし,付着したものを取り除くのも困難です.
RM600 は,その点の心配が無いのが良い所です.
天候が悪いときに屋外で使うこともできますし,測定器に土などが付いても,水で洗い流すことができるのは大変安心です.
除染を行う際など,特に屋外で汚染箇所を調べるのに活用できる測定器だと思います.