ガイガーカウンター Polimaster PM1621・PM1621M を
たろうまる
さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.
以前
たろうまる
さんから,Polimaster PM1610・PM1405 を貸して頂きましたが,
販売機種を増やすということで,新しく PM1621・PM1703MA もレビューさせて頂けることになりました.
また,その後PM1621Mもお借りできましたので,レビューの内容をアップデートしています.
この機種は今後扱う予定とのことですので,購入を検討される方は以下ページから問い合わせをしてみてください.
放射線測定器のたろうまる:問い合わせページ
この機種の正式なページは現在準備中とのことです.
PM1703MAについてはPM1703MAレビューのページにまとめています.
PM1621 はガイガーミュラー管を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
PM1621・PM1621M・PM1621A・PM1621MA の4モデルがあり,Mの有無,Aの有無でそれぞれ以下のように異なります.
Mの有無は機能の差になります.
機能 | PM1621・PM1621A | PM1621M・PM1621MA |
---|---|---|
探索モード | × | ○ |
振動・光(LED)アラーム | × | ○ |
光(LED)アラーム | × | ○ |
音・振動アラームのON/OFF アラーム音量を本体で調整可能 |
× | ○ |
クリップ | プラスチック製 | 金属製(しっかりした感じです) |
Aの有無は測定できる線量率の範囲の差になります.
一般の方が利用する場合,さすがにAモデルは不要かと思います.
機能 | PM1621・PM1621M | PM1621A・PM1621MA |
---|---|---|
線量率範囲 | ~0.2Sv/h | ~2.0Sv/h |
届いたものは次の写真のようなものです.
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
本体の他に,日本語マニュアルが付属していました.
日本語マニュアルについては,
たろうまる
さんが独自に作成したものです.
厚みはありますが,大きさは結構小型です.
![]() |
![]() |
背面にクリップが付いています.
+の形の溝がある蓋をコインで回すと,電池を入れる場所があります.
ここに単3電池を1本入れておけば,1年間使うことができます.
PM1621M もほぼ一緒です.
たろうまるさん独自の日本語かんたんマニュアルの方は改良されていて,
最初はホチキス止めでしたが今はきれいになって,内容もわかりやすくなっているようです.
![]() |
![]() |
クリップはPM1621とPM1621Mで少し違い,金属製のよりしっかりした感じのクリップになっています.
大きく広がるので,こちらのクリップの方が使い勝手が良い感じです.
個人線量計なので,身につけて測定する事を前提にしています.
そのためか,方向によって感度にかなり差があります.
PM1621は以下のようにかなりの違いがあります.
空間線量を測定する使い方をする場合,向きによって誤差が大きくなりますので,
測定時は向きに注意をする必要がありそうです.
![]() |
画面表示は以下のようになります.
左から,線量率表示・積算線量表示,シリアル番号&製造年月表示・IRDA通信画面です.
モードボタン(上のボタン)で切り替えられます.
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
線量率表示画面では,標準で下に何もでませんが,設定で誤差と,線量率を算出するのに使った時間を表示させることができます.
線量率表示画面の下の目盛りは,線量率に応じてバーが表示されます(後述)
積算線量表示では,積算線量と,積算時間が表示されます.
シリアル番号&製造年月表示画面については,シリアル番号はぼかしを入れています.(^^;
2011/03製造のようです.
最後はIRDAの画面です.
PCと通信する際は,この画面を表示させて,ONにする必要があります.
PM1621Mは,PM1621の画面のIr通信画面の後に,以下の3画面が追加されています.
左から,探索モードのON/OFF,音アラームのON/OFFと音量,振動アラームのON/OFFの画面です.
![]() |
![]() |
![]() |
探索モードは,OFFにすると,線量率の閾値1段階目,2段階目でアラームの強さが変わります.
1段階目ではピピッ…という音で,2段階目ではピピピッ…という音になります.
探索モードをONにすると,線量率の閾値1段階目を超えると,超えた大きさに応じて音・振動・光の強さが連続的に変化します.
ホットスポットのような汚染箇所を探すとき,強さがなめらかに変わるので,場所を特定しやすくなります.
Polimaster製の他機種では,多くの場合キャリブレーションを行い,その場所の線量率を覚えさせて,
そことの差が大きくなるとアラームが鳴りますが,この機種は最初の閾値は自分で設定する必要があります.
(線量率モードの画面から設定画面に入れば,本体側の操作で変更可能です)
音・振動アラームのON/OFFも切り替えられます.
線量率画面は,PCから次の設定画面でカスタマイズができます.
![]() |
誤差と,平均時間を両方出すように設定すると,次のような画面になります.
![]() |
![]() |
![]() |
画面下の右側が誤差表示になります.
画面下の左側は,平均時間の表示(単位は秒数)です.
表示されている線量率を,何秒前からの統計データで計算したかが表示されます.
2999秒を超えると,一番左のように「---」表示になります.
線源を近づけると,統計がリセットされて,中央,右の画面のように変化します.
中央は,過去14秒の統計情報で線量率は0.85μSv/h,誤差25%という表示です.
右側は,更に10秒経って24秒間での線量率で,誤差が23%に減少したことになります.
線量率は,Polimaster系の誤差表示タイプのロジックなので,
線量率が大きく変化しなければ,長い時間を掛けてより正確な数値を表示しようとします.
この機種では標準の出荷では誤差が出ないので,どのくらい正確になっているかは分かりませんが,
数値は時間が経つほど落ち着いていきます.
数値の安定度を別ページで比較してみましたので,そちらを参照してください.
参考:線量率の変動比較 (2011/09/25)
また,2つのボタンの同時押しで線量率の測定をリセットすることができます.
Polimasterは線量率が安定していれば,長時間かけて測定した結果を表示しようとしますが,
線量率が僅かに変化した場合は,自動的にリセットされず,正確な数値になかなか収束しないことがあります.
場所を移動した場合などは,リセットするとその場での線量率を正確に測ることができます.
同時押しといっても,モードボタンを先に押すとモードが変わって駄目なようですので,
ライトボタンを押したままモードボタンを押すのが良いようです.
別機種ですが,PM1405での誤差表示について調べたことがありますので,
下記の記事も参考になると思います.
参考:Polimasterシリーズの誤差表示 (2011/08/07)
線量率表示では,次の画像のように線量率の大きさに応じてバーが表示されます.
10倍毎に1つ増えるようです.3つ以上は確認できませんでした.
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
放射線源をそばに置いて反応速度を調べてみました.
最初はCs-137の密封線源で,その後複数の線源を近づけています.
アラームは2μSv/hと10μSv/hに設定しているので,最初は1段階目のアラーム,次は2段階目のアラームが鳴っています.
10μSv/hであれば瞬時に反応しますし,2μSv/hでも結構速く反応します.
Mモデルは,探索モードが使えます.
探索モードをONにすると,線量率の1段階目の閾値を超えた後は,超えた線量率に応じてなめらかにアラームの強さが変わります.
LEDランプも付いているので,それを頼りに汚染箇所を調べることが出来ます.
部屋の線量率が0.06~0.08μSv/hだったので,最初は0.09μSv/hくらいに第1段階のアラームに設定しようかと思ったのですが,
最小値は 0.10μSv/h のようです.
また,実際の線量率ギリギリにすると,統計がリセットされた後に線量率が少し揺らぐので,そのときにもアラームが鳴ってしまいます.
普段は,平均的な線量率の2~3倍くらいに設定するのが良さそうです.
以下の動画では,第1段階のアラームを0.20μSv/hに設定し,
最初はCs-137の密封線源,その後複数の線源を近づけています.
ガイガーミュラー管を利用した機種は,自己ノイズによって放射線が無くても少し線量がカウントされてしまうようです.
5cm厚の鉛ブロックで測定器を囲み,しばらく置いてから,PCソフトウェアから履歴を読み取りどこまで線量が下がったかを確認しました.
結果,およそ 0.025μSv/h でした.
シンチレーションタイプの測定器では0.00μSv/hになりますので,0.02~0.03μSv/hくらい放射線量が高めに出るようです.
実際に測定結果の比較でも,そのくらい高めの印象があります.
0.1μSv/h以下など,低線量を測定する場合は,0.02~0.03μSv/hくらい高めの数値になると考えると良さそうです.
PM1621 で使えるソフトウェアは2種類あります.
1つは,付属CD-ROMに入っている PM16xx,もう1つは PM1610 のレビューでも紹介した Personal Dose Tracker です.
2種類あるのですが,PM16xx の方は使い勝手が悪く,基本的な設定なども Personal Dose Tracker の方で行えます.
ただし,画面表示のカスタマイズは PM16xx の方を使わないと設定できません.
Personal Dose Tracker は現在日本語化がされており,今回は日本語版の画面キャプチャにアップデートしています.
今後たろうまるさんから配布予定とのことです.
(翻訳の調整などもたろうまるさんでやられているそうです)
PM1621 は,IRDAで通信を行います.
USBにIRDAアダプタを付けた物を,次のように数cm離して置きます.
![]() |
この状態で本体を操作して,「off Ir」画面を出してライトボタンを押します.
そうすると,on に切り替わって通信可能な状態になります.
PC側で,Find Instrument を押すと,下のようなバーが出て通信が行われます.
本体の操作は,通信を行うたびにやる必要があります.
(データを取り込んだ後,本体の設定を変更する場合,そこでもう1回本体操作が必要です.)
![]() |
データが取り込まれると,次のように積算線量や,線量率の変化をグラフで見ることができます.
![]() |
Personal Dose Tracker には,積算線量を管理できるだけでなく,
データをExportする機能もついています.
Export機能についてはPM1610 のレビューの方に記載していますので,
そちらを参照下さい.
PM1621 は,500ポイントのメモリ容量があります.
PM1610 に比べると少なく,10分毎に線量を記録した場合,3日半くらい記録できる計算です.
1分毎にすると,8時間くらいしか記録できませんので,5分~1時間に1回くらいの頻度で記録する設定が良いようです.
1分毎など,細かく記録したい場合は,メモリ容量の大きいPM1610の方が良いかもしれません.
(ただし,感度はPM1621の方が良いので,線量率はPM1621の方が素早く正しい値に収束します.)
付属ソフトで設定の変更もできます.
PM1621の場合,アラームの音のON/OFFはPCソフトウェアからしか設定変更ができません.
(PM1621Mモデルの場合,本体で設定変更可能です)
PM1621は振動・LED機能がありませんので,アラームを知らせる方法は音しかありません.
そのため,本体のみを使う場合は音をOFFにするのは実質アラーム機能を使わないのと同様です.
PC連携でイベントを見れば,アラームの発生有無を確認できるので,
PCソフトを利用していく場合は,閾値は設定しておき,アラーム音はOFFにするのも意味があると思います.
日常的に持ち歩いて使う場合,電源を簡単に切れないので,アラーム音はオフで使う必要があるかと思います.
PCソフトでアラーム音をOFFにするか,本体でアラームの閾値を最大999Svなどに設定するのが良いと思います.
高線量時にアラーム機能で知らせて欲しい場合は,振動アラームがある PM1621M を選択するのが良いと思います.
![]() |
Polimasterのソフトウェアは,64bitに対応できていない部分があるようです.
Personal Dose Tracker 自体は64bitでも動作するのですが,
IRDA 通信がうまくいきませんでした.
32bit 環境ではうまく機能します.
PM1610 はUSB接続で,64bit環境でうまく動いていましたので,
32bit環境が準備できない場合は,PM1610 の方を検討すると良いかもしれません.
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
また,線量率の変動のテストも行いました.以下も参照して下さい.
参考:線量率の変動比較・第3回 (2011/10/10)
GM管のため,今回テストしたような,0.1μSv/h以下の低線量では若干高めになる傾向があるように思います.
Polimaster の誤差表示タイプのアルゴリズムのおかげで,表示される線量率は安定していて,
移動せずに特定の場所の線量率を測るのには非常に便利だと感じました.
たろうまるさんからしばらくの間お借りして持ち歩きました.
標準的なGM管の測定器…という印象です.
検出器としてGM管を利用しているので,感度が高いなどの特徴はありませんが,
誤差表示のアルゴリズムのおかげで,安定した線量率が表示されるため,使い勝手は良いと思います.
GM管の機種ですと,感度が低いために,低線量では数値がふらついてしまい,0.05~0.15μSv/hくらい,
みたいな数値の読み取りをしてしまいがちです.
この機種では,線量率が変動しなければ,その分時間を掛けて平均を取りますので,
手作業で平均計算したりする必要無く,安定した数値を読み取ることができます.
線量率の測定と,積算線量と両方でき,バッテリーの持ちも良いので,
バランスの取れた機種だと思います.
Mモデルならアラーム機能もあり,1μSv/hなどある程度の線量率ならすぐに反応しますので,
ホットスポットを回避したい,などの通常の利用範囲なら十分な反応があると思います.
より積算線量の方を重視する場合は,より小型&長時間記録できる PM1610,
感度を求める場合は,シンチレーション式で高感度の PM1703MA,
標準的な測定器にするなら PM1621 を選ぶと良いと感じました.
少し価格差はありますが,ホットスポット回避などの目的にも利用できますので,
日常生活で利用するなら振動アラームが付いたPM1621Mモデルの方がお勧めです.
国民生活センターのテストで,PM1621M がテストされていました.
参考:デジタル式個人線量計のテスト結果
詳細は中味を読んで頂ければと思いますが,良い結果が出ています.
この結果からも,表示値が正確な機種と判断できると思います.
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
積算線量の記録が途切れる期間を短くできますから,積算線量計としてPM1621を利用する場合には非常に良いサービスだと思います.