放射線測定器 Polimaster PM1703MA を
たろうまる
さんから無償でお借りすることができたので,使用感などをまとめてみました.
2011/11/05追記:その後購入しました.最後に少し追記しています.
以前
たろうまる
さんから,Polimaster PM1610・PM1405 を貸して頂きましたが,
販売機種を増やすということで,新しく PM1621・PM1703MA もレビューさせて頂けることになりました.
購入を検討される方は,
たろうまるさんのPM1703MAページ
をご覧下さい.
PM1621についてはPM1621レビューのページにまとめています.
PM1703MA はCsIシンチレーション検出器を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
届いたものは次の写真のようなものです.
本体の他に,日本語マニュアルが付属していました.
日本語マニュアルについては,
たろうまる
さんが独自に作成したものです.
厚みはありますが,大きさは結構小型です.
背面にクリップが付いています.
+の形の溝がある蓋をコインで回すと,電池を入れる場所があります.
ここに単3電池を1本入れておけば,1000時間使うことができます.
画面表示は以下のようになります.
左がサーチモード,右が線量率測定モードです.
モードボタン(上のボタン)で切り替えられます.
サーチモードでは,上にカウント数,下に誤差が表示されます.
線量率測定モードでは,上に線量率,下に誤差が表示されます.
モードを切り替えても,測定結果がリセットされることはありませんので,
カウント数と線量率を見比べることができます.
電源ON後の様子を撮影しました.
CAL表示の時は,バックグラウンドの線量を測定しています.
その測定結果を元に,自動的にアラームを鳴らす線量が設定されます.
アラーム線量が自動設定されるのは大変便利なのですが,電源ONには少し時間がかかるので,
普段は電源を切らずに利用した方が便利だと思います.
線量率は,Polimaster系の誤差表示タイプのロジックなので,
線量率が大きく変化しなければ,長い時間を掛けてより正確な数値を表示しようとします.
従って,徐々に誤差表示が小さくなり,より安定した数値が表示されます.
数値の安定度を別ページで比較してみましたので,そちらを参照してください.
参考:線量率の変動比較 (2011/09/25)
この機種は感度が高いためか,リセット機能がありません.
別機種ですが,PM1405での誤差表示について調べたことがあり,
この機種では場合によっては線量率が落ち着くまでに6分以上かかるケースが確認できます.
参考:Polimasterシリーズの誤差表示 (2011/08/07)
しかし,この機種は感度が大きく違います.
感度がPM1405では150cpm/μSv/h,この機種では6000cpm/μSv/hで40倍違いますから,
PM1703Mなら同じ問題が起きても比較的短時間で正しい数値に落ち着くと考えられます.
線量率が上昇した場合と,下降した場合では反応が異なるようで,
上昇の場合はかなり短時間で反映されます.
一方,下降の場合は少し時間がかかることがあり,0.02μSv/hくらいの違いの場合は数分くらい変化しないこともあるようです.
普段使っている間はリセットはほとんど不要かと思いますが,
その場の線量率を正確に知りたい場合などは,電源OFF→ONでリセットできます.
放射線源を近づけて反応速度を撮影しました.
汚染を探すときはcps表示にして使用します.
動画を見てもらうと分かりますが,本当に気持ちいいくらい素早く反応します.
次に,Sv/h表示での反応速度の様子です.
Sv/h表示では,数値を正確に出すためか,変化が緩やかになっています.
(それでもかなりの速度で反応しますが…)
線量率の表示を安定させるためにこのような仕様なのではないかと思います.
線量率モードでは,PCから設定した閾値を超えたときに,アラーム(音・バイブ)が1段階で動作します.
持ち歩いて,汚染箇所に近づいたときにに知りたいという場合,普段はcpsモードにしておく必要があります.
PM1703MA はエネルギー補償がありませんので,エネルギーによって感度が大きく変わってきます.
マニュアルから引用すると,以下のようなエネルギー特性になっています.
低エネルギーでは,4.5倍ほど高感度であることがわかります.
バックグラウンド線量はエネルギーが低い部分に多く出るので,
PM1703MAではバックグラウンド線量は高めに表示されるようです.
PM1703MA で,cps表示と線量率表示を切り替えて,いろいろな線源でその関係を調べたところ,次のようになりました.
cps/μSv/h が一定で無いことから,ある程度のエネルギー補償はされているようです.
そのため,エネルギー特性そのままに4.5倍も線量率がずれたりすることはないようです.
おそらく,エネルギー補償が十分な精度ではないため,スペック上はエネルギー補償無しとしているのだと思います.
線源 | 主要エネルギー | cps | μSv/h | cps/μSv/h |
---|---|---|---|---|
Cd-109 | 88.0keV | 111 | 0.25 | 444.00 |
Ba-133 | 122.1keV | 3546 | 17.28 | 205.21 |
Cs-137 | 661.6keV | 330 | 2.89 | 114.19 |
Mn-54 | 834.8keV | 1105 | 16.85 | 65.58 |
Co-60 | 1173.2keV・1332.5keV | 2014 | 38 | 53.00 |
Na-22 | 1274.5keV | 638 | 6.75 | 94.52 |
PM1703MA には,PM PRD というソフトウェアが付属します.
こちらを利用することで,イベントの記録を参照したり,PM1703MA の設定を変更することができます.
写真のように,IRDAアダプターを数cmまで近づけます.
タスクトレイに PM PRD が常駐していますので,右クリックしてメニューから選ぶと通信が行われます.
以下の図のように,イベントとして動作状況を見ることができます.
cpsで記録されるか,μSv/h で記録されるかは,そのときの本体の表示に依ります.
ですので,線量率を残しておきたい場合,本体の表示は Sv/h にしておく必要があります.
線量率を記録するというよりは,発生したアラームを後から確認する目的で用意されているようです.
イベントは1000ポイントまで記録できます.
10分毎に記録すると約1週間になります.
記録は最小で10分間隔で,それ以下の数値を設定しようとしても10分に変更されてしまいます.
次のような画面で設定変更ができます.
本体のみでは設定できない項目もあるので,それらはPCから設定します.
Coefficient n, gamma で探索モードのアラーム感度,
Safety Alarm threshold で,線量率モードのアラームを設定できます.
探索モードのアラーム感度は,敏感に反応するように設定すると,
ランダムに出る放射線がたまたま多かったときに誤ってアラームが鳴ることがあります.
デフォルトの 5.3 でも十分に素早く反応するので,変更する必要は無いかと思います.
線量率モードのアラームは,自分が危険だと思う閾値を設定しておくと良いかもしれません.
探索モードはかなり敏感に反応するので,建物の屋内から外にでたときにもなることがありますし,
自動車などで移動していると反応しすぎると感じる場合があるかもしれません.
そのような場合は,アラームをならしたい線量をここで設定しておき,線量率モードにすると良いと思います.
PM PRD は 64bitに対応できていないようです.
64bit 環境ではエラーが出て起動しません.
一部の設定変更を除き,基本的にはPCソフトウェアを利用する必要性はあまり無いので,
PCソフトが利用できなくてもあまり大きな問題は無いと思いますが,
PCソフトを使いたい場合は,購入時に注意が必要です.
現在の最新版では,64bit環境で動作するようになっています.
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
また,線量率の変動のテストも行いました.以下も参照して下さい.
参考:線量率の変動比較・第3回 (2011/10/10)
エネルギー補償が無いのが欠点ですが,テストした範囲では他の測定器とほぼ同等の線量率を表示していました.
線量率の変動比較 第3回の結果などを見ると,エネルギー補償がある Mr.Gamma より少し高い数値ですが,
同じくエネルギー補償がある TA100U よりは低い結果です.
わたしの自宅などの線量が低い場所では,エネルギー補償がないために大きく外れた数値が表示されたりということはありませんでした.
PM1703MA の線量率の表示はきわめて安定している上,反応速度もとても速いので,
特定の場所の線量率を知るほか,移動しながら線量率の変化を見るのにも適していると思います.
たろうまるさんからしばらくの間お借りして持ち歩きました.
この機種の特徴は,やはりその反応速度と,表示される線量率の安定性だと思います.
反応速度では,RadEye PRD など40万円クラスの測定器と同レベルです.
エネルギー補償や,積算線量の機能はありませんが,この素早い反応速度が15万円で…
というのはコストパフォーマンスが良いと思います.
すぐに反応し,そしてすぐに数値が安定しますので,移動しながらいろいろな場所の線量率を測定したり,
汚染されている箇所を探すのには最適です.
そういった目的に,20万以下の価格帯では飛び抜けた性能だと感じました.
エネルギー補償が無いとか,積算線量が計れないなどの欠点はありますが,
この反応速度・表示値の安定性はその欠点を上回るメリットだと思います.
汚染箇所を探すのに向いた機種を持っていなかったので,購入しました.
手元にはスペクトルがみれるTA100U,自分で平均して正確に数値を出す用の PA-1000 Radi があるのですが,
最近世田谷のラジウム騒ぎとかもありましたし,やっぱりすぐに反応する機種が1つ欲しいと思って,こちらにしました.
反応速度がよく,線量率モードでもアラームが鳴るPM1703MO-1Bも良いのですが,やはり価格を考えるとPM1703MAの15万は魅力でした.
かんたん説明書が付属していました.
お借りしたときは無かったので上記レビューには記載がありませんが,こちらの機種でも付属するようです.
(たぶん販売開始前にお借りしたので,準備中だったのだと思います(^^;)
たろうまるさんでは,測定器故障中に代替機の貸し出しサービスを行っているそうです.
PM1610またはPM1621がレンタルされるとのことです.
PM1703MAの代わりにはなりませんが,測定器1台しか持っていない場合には安心できるサービスだと思います.