Phase Select EQ
Phase Select EQは、周波数、左右の絶対位相差、左右のレベルバランスの3つで同時に選んだステレオの周波数成分をブーストまたはカットします。左右のチャンネルに同じ正のゲイン倍率をかけるため、位相を回転させたり変えたりせずに、狙った空間成分のレベルだけを調整します。通常の周波数だけを基準にするEQでは、中央のボーカルや楽器と、同じ周波数帯にある左右に広がった音や片側に振られた音を分けられない場合に使います。
独立した5つのBandを使用でき、各Bandには、Gainがそのまま適用される内側の Core と、倍率が100%へ滑らかに移行する外側の Transition があります。重なったBandのゲインは乗算されるため、複数のブーストを重ねると0 dBFSを超えることがあります。十分なヘッドルームを確保し、バイパスと比較してください。Phase Select EQはFFT解析によるレイテンシー(48 kHzで5,120サンプル、約106.7 ms。44.1 kHzでは約116.1 ms)を加えます。この遅延は 総遅延 に含まれて表示され、リアルタイムモニタリングや映像との同期に影響する場合があります。
音質調整ガイド
左右に広がった高域のギラつきを抑える: 4~12 kHz、Phase 90~180°付近にBandを設定し、Gainを70~90%、Transitionを広めにします。中央の細かな音はそのままに、逆相に近い高域上部の耳障りな成分を和らげます。
中央のボーカルに存在感を加える: 1~4 kHz、Phase 0~30°(またはBalance -17~+17%)付近にBandを設定し、Gainを110~125%にします。左右に広がった響きはブーストせずに、中央付近の中域を前に出します。
拡散した低中域の響きを整える: 150~600 Hz、Phase 60~150°付近にBandを設定し、Gainを80~90%にします。中央の低音やスネアの胴鳴りを保ちながら、左右に広がった低中域のこもりをすっきりさせます。
片側に強く振られた楽器を抑える: Balance 表示で -100~-70%(左)または +70~+100%(右)を選び、片側だけの成分が現れる-180°と+180°を含むように、Phase Coreを150~180°にします(Balanceだけで選ぶ場合は0~180°)。楽器に合わせて周波数範囲を絞り、Gainを70~90%に下げます。
これらの位相範囲は典型的な傾向であり、音源の位置を固定的に示すものではありません。ドットが実際に現れる場所を見ながら少しずつ調整し、ヘッドホンとスピーカーの両方で結果を確認してください。
パラメータ
Band 1~5 / チェックボックス (Off/On): 編集するBandを選び、そのBandのオン/オフを切り替えます。
Gain (0%~200%): Core内のレベル倍率です(100% = 変化なし、0% = ミュート、200% = +6 dB)。
Solo (Off/On): SoloにしたBandが選んでいる成分だけを試聴します。Soloがオンの間はGainが無視され、SoloにしたBandの外側はすべてミュートされます。
Core Low Freq / Core High Freq (20 Hz~40 kHz、サンプルレートによる上限あり): 効果を100%適用する周波数範囲です。
Low Freq Trans / High Freq Trans: Coreの下側と上側で、効果が移行する周波数の幅です。
Core Low Phase / Core High Phase (0°~180°): 効果を100%適用するL/R絶対位相差の範囲です。
Low Phase Trans / High Phase Trans: 0°側と180°側で、効果が移行する位相の幅です。
Outer Low Bal / Core Low Bal / Core High Bal / Outer High Bal (-100%~+100%): 左右の振幅バランスについて、Coreと外側のTransitionの境界を設定します。
マップ上のハンドル: Bandの枠の内側をドラッグすると移動し、Coreの辺や角をドラッグするとCoreの大きさが変わり、外側の破線のハンドルをドラッグするとTransitionを調整できます。
選択マップの見方
縦軸: 対数周波数です(下が低域、上が高域)。
横軸: マップ上部の Phase と Balance で切り替えます。PhaseまたはBalanceのコントロールを編集すると、表示が自動で切り替わります。
Phase: 中央の0°が同相で、左右端の-180°と+180°は同じ逆相の点です。位相差の絶対値で選ぶため、枠は0°を挟んで左右対称になり、0°に接すると中央でつながり、180°に達すると両端をまたいで続きます。
Balance: 中央が50:50、左端が左のみ、右端が右のみです。Balanceは
(右の振幅 - 左の振幅) / (左の振幅 + 右の振幅) × 100%で求めます。
片側だけの音: 片方のチャンネルにしかない成分はBalanceが-100%または+100%になり、Phase表示では-180°(左)または+180°(右)に現れます。そのため、片側に振られた音はどちらの表示からでも選べます。
ドットと枠: 白いドットは最近の入力成分です(明るく大きいほど強い成分で、非表示側の軸で除外されたドットは暗く表示されます)。内側の実線の矩形が有効な各Bandの Core、外側の破線の矩形が Transition です。編集中のBandは強調表示され、各Coreの角にある番号でBandを見分けられます。
バッジ: 各Band番号の横のバッジは、非表示側の軸の範囲を「外側の下限›Coreの下限–上限›外側の上限」の形で示します。例:
P 20°›40°–80°›100°、B 100:0›80:20–70:30›0:100(左:右の比率)。P fullまたはB fullは、その軸が制限されていないことを示します。読み値: マップにマウスを重ねるか、タッチしてなぞると、その位置の周波数と、位相差またはBalanceを読み取れます。
Balanceの目盛りはよく使われるチャンネル比に対応しています。左右のレベル差のおおよその値を参考として示します。
| Balance | 0% | ±17% | ±33% | ±60% | ±82% | ±100% |
|---|---|---|---|---|---|---|
| L/Rレベル差 | 0 dB | ±3 dB | ±6 dB | ±12 dB | ±20 dB | 片側のみ |