Tonal Balance EQ
再生中の音楽の長期的な音色バランスを測定し、選んだスタイルの市販音源に典型的なスペクトルバランスへ穏やかに近づけます。プレイリストやアルバム、ストリームの曲が一貫して暗すぎる、明るすぎる、低音がふくらむ、薄いと感じるときに、曲ごとに手でEQを調整せずに自動で揃えたい場合に使います(補正するのは録音のバランスで、スピーカーや部屋ではありません。音響的な補正にはRoom EQを使ってください)。
全体のラウドネスを揃えたうえで測定したスペクトラムと目標を比較し、強すぎる帯域を下げ、1つのメイクアップゲインをかけることで、聴感上の音量を変えずに弱い帯域を前に出します。無音や曲の休止部分は測定から除外し、ヒスや、持続するシンセパッドのような定常的でノイズに近い帯域には持ち上げを控えるため、何もない周波数の両端が不自然にブーストされることはありません。全チャンネルに同じゼロ遅延の補正をかけるため、ステレオイメージは保たれます。
音質向上ガイド
さまざまな曲が混ざったプレイリストやストリーミング: 初期値(Target: All、Amount: 100%、Averaging Time: 30 s)から始めます。測定の信頼性が高まるにつれて補正が数十秒かけて立ち上がるので、30秒ほど再生してからバイパスと比較してください。
アルバム全体に一定の補正をかける: アルバムの開始時に Reset をクリックし、Averaging Time を ∞ にします。補正が再生全体を平均し、固定のカーブに落ち着きます。
ジャンル別の目標: 特定のスタイルに合わせるなら Classical、Electronic、Pop、Rock を、さまざまな音楽を聴くなら All を選びます。
補正を控えめにする: 大まかで穏やかな傾きにするには、Amount を下げる(例: 50%)、Range を小さくする(例: 3 dB)、または Smoothing を上げます(例: 1 oct)。
自分好みのハウスカーブ: グラフの下にある5つの Target Adjust バンドで、目標を好みに合わせて傾けたり形を変えたりします(例: 8 kHzに+1.5 dBのHigh shelf)。各録音は、このカスタム目標へ必要な分だけ補正されます。
固定の傾きの基準: Target: Tilt を選ぶと、Corner より下は平坦で、そこから一定の Slope で下がる目標になります(−5 dB/octが一般的な市販マスターに近く、−3 dB/octがピンクノイズに相当します)。
メイクアップゲインが保つのはピークレベルではなくラウドネスなので、ピークが上がることがあります。後段でクリップする場合は、このプラグインの後でレベルを下げるか、リミッターを追加してください。
パラメータ
Target - 目標とする音色バランスです。All(初期値、4スタイルを均等に混ぜたもの)、Classical、Electronic、Pop、Rock、Tilt(固定の傾きの基準)から選びます。
Slope(-18~0 dB/oct、初期値 -6 dB/oct、Tiltのみ)- Corner より上で目標が下がる傾きです(-3 dB/oct = ピンクノイズ、約-5 dB/oct = 一般的な市販音源)。浅い値ほど高域の多い目標になり、初期値は一般的な音楽よりやや暗めのバランスです。
Corner(20~1000 Hz、初期値 250 Hz、Tiltのみ)- この周波数より下では、Tilt の目標が平坦になります。低い値ほど重低音の多い目標に、高い値ほど低音の少ない目標になります。
Amount(0~100%、初期値 100%)- 補正全体の強さです。0%では音は変わりませんが、測定とグラフは動き続け、Range、Smoothing、Low、High は無効になります。
Range(0~12 dB、初期値 6 dB)- 各帯域で許される、上下それぞれの最大のゲイン調整量です。小さいほど変化が控えめになり(0 dBで補正はオフ)、大きいほど目標から遠い録音も目標に近づけられます。
Smoothing(0.1667~2 oct、初期値 0.5 oct)- 補正カーブの起伏の幅です(大きいほど広い傾きになります)。
Averaging Time(0.1 s~∞、初期値 30 s)- 測定を積算する時間です。短い値(例: 0.5~1 s)は、暗いAメロと明るいサビのような曲中の変化に追従し、長い値は安定した補正になります(∞ では最後の Reset 以降を継続して平均します)。
Low(20~200 Hz、初期値 20 Hz)/ High(2000~20000 Hz、初期値 16000 Hz)- 補正で形を変える範囲の下端と上端です(範囲外では補正値が一定に保たれます)。重低音に手を加えたくない場合は Low を上げ、最上部のオクターブに手を加えたくない場合は High を下げます。
Average SPL(60~96 dB、初期値 83 dB)- 推定リスニングレベルです。静かな帯域が、持ち上げてよいほど聞こえるかどうかの判定に使い、出力レベルは変えません。低い値ほど多くの微弱な帯域を聞こえないものとみなして持ち上げず、高い値ほど多くを聞こえるものとみなします。
Target Adjust - 目標カーブの形を変える、5つのパラメトリックバンドです(Peak / Low shelf / High shelf、20 Hz~20 kHz、±20 dB、Q 0.1~10、シェルフは2まで、初期値 Q 0.7)。正のゲインではその帯域が多め、負のゲインでは少なめの目標になります。
Target Adjust が変えるのは目標だけです。各録音は引き続き Amount と Range の範囲内で目標へ補正されるため、大きく調整した場合は Range を広げる必要があることがあります。全体のレベルは比較の前に揃えられるため、目標全体を同じ量だけ上げても何も変わりません。狭いピークやディップは平滑化されるので、狭い範囲の修正には5Band PEQを使ってください。
ビジュアル表示
横軸は約26 Hz~18.6 kHzの周波数、縦軸はレベル(dB)です。1 Hzあたりの値で表示するため、ピンクノイズは-3 dB/octで下がる直線になります。縦軸の範囲は曲線に合わせて広がり、Reset や Target の変更で±12 dBに戻ります。Low より下と High より上の領域は薄く表示されます。
Target は Target Adjust を含む目標バランスです。スタイルを選んだ場合、網掛けの帯は曲ごとの典型的なばらつきを示します。これは音楽コレクションの長期スペクトラムから学習したもので、Tilt にはありません。
Measured はドット付きの線で、目標に揃えた長期スペクトラムの測定値です。目標の帯より下にある帯域ではその録音が典型より弱く、上にある帯域では強いことを示します。周波数をプレビューしている間は測定を止めます。
EQ response は太い線で、メイクアップゲインを含めて適用しているゲインです(0 dB = 変化なし)。
Withheld lift は網掛け領域で、ノイズ的な成分や音楽以外の成分として持ち上げを控えなかった場合に、その帯域がおよそどれだけ多く持ち上げられたかを示します。
Target adjust は0 dB付近にある番号付きハンドルの付いた細い曲線で、設定したとおりのバンドを示します。ハンドルは Target の線上にはありません。ハンドルをドラッグすると周波数とゲイン、ハンドルの上でマウスホイールを回すとQが変わり、右クリックするとそのバンドのオン/オフが切り替わります。再生中は Target の線がすぐにハンドルの変更に追従し、停止中は最後の形を保ちます。
グラフにマウスを重ねるかドラッグすると、各帯域の値、Presence(音楽成分と認識された時間の割合、%)、Make-up gain、積算 Loudness(LKFS)を確認できます。音声を測定する前は、グラフに "Play audio to start measuring" と表示されます。
Reset は蓄積した測定を消去します。Target Adjust は変わりません。
Copy as PEQ は、EQ responseを5Band PEQの設定としてコピーします。Effect Pipelineで Ctrl+V を押すと選択中のエフェクトの前(選択がなければ末尾)に挿入されるので、Tonal Balance EQをオフにすると補正を固定できます。コピーは Low から High までのカーブの形を再現しますが、全体のレベルは再現しないため、ラウドネスがわずかに変わることがあります。グラフにEQ responseが表示され、Amount が0%より大きいときに使えます。