Crosstalk Cancellation
Crosstalk Cancellationは、耳元で測定した応答を使い、各ステレオスピーカーの音が反対側の耳へ届く成分を低減します。測定した1か所で2本のステレオスピーカーを聴くときに、より明瞭でバイノーラルに近い定位を得るための機能です。ヘッドホンやモノラル再生には使用しません。
Crossfeed Filter はヘッドホン用にスピーカーらしいクロストークを少し加えるのに対し、Crosstalk Cancellationはスピーカー再生で測定済みのクロストークを減らします。
測定と割り当て
マイクを左耳位置に置き、左・右スピーカー出力を選んで1回測定します。測定の左チャンネルを LL: L Speaker → Left Ear、右チャンネルを RL: R Speaker → Left Ear に割り当てます。
マイクを右耳位置へ移して同じ2出力測定を行います。左チャンネルを LR: L Speaker → Right Ear、右チャンネルを RR: R Speaker → Right Ear に割り当てます。
同じスピーカー配置・聴取位置で作成した単一ポイント測定を使い、各スロットには異なる測定チャンネルを指定します。
まずは Taps 4096、Regularization 50%、Max Gain 12 dB、Freq Low 200 Hz、Freq High 6000 Hz、Direct Window 8 ms、Strength 70%、Output Gain 0 dB、Latency 128 samplesの既定値から始めます。測定位置に座ってバイパスと比較し、少しずつ調整してください。
パラメーター
Taps (1024~16384): フィルターの長さです。増やすとキャンセルの精度を高められますが、処理量とモデル化遅延も増えます。テール切れの警告が出たら、まず増やします。
Regularization (0~100%): 不安定になりやすい補正を抑えます。少し頭を動かしただけで音色が不自然になるときは上げ、測定位置でのキャンセルを強めたいときだけ下げます。
Max Gain (0~24 dB): 補正フィルターの最大ブーストです。低い値は穏やかでヘッドルームを保ち、高い値はキャンセルを強めますが、結果が敏感になることがあります。
Freq Low (20~2000 Hz) / Freq High (1000~20000 Hz): 主な補正帯域です。帯域外は通過します。まず200 Hz~6000 Hzを使い、頭の動きに敏感すぎる場合は帯域を狭めます。
Direct Window (2~50 ms): 測定の直接音を使う長さです。短くすると部屋の反射を減らせますが、実効低域限界が上がる場合があります。長くすると低域情報は増えますが、反射も含みやすくなります。
Strength (0~100%): 0%の遅延された未補正音から、100%の完全補正までを混ぜます。70%から始め、測定位置の外で不自然なら下げます。
Output Gain (-24~+24 dB): 補正後の最終レベルです。最初は0 dBにし、ヘッドルームが必要なら下げます。
Latency (0 / 128 / 256 / 512 / 1024 samples): 処理ブロックの遅延です。高い値は処理に余裕を与え、低い値はモニタリング遅延を抑えます。
ステータスと遅延
最初は Assign all four measurements to begin. と表示されます。設計中は進行状況、準備完了時は最大フィルターゲインが表示されます。テール警告は Taps または Regularization を上げる目安です。Direct Window が実効低域を上げたという警告は、選んだ窓が短すぎて指定した低域を使えないことを示します。
割り当てた測定が見つからない場合は選び直します。フィルターを準備できない場合は Taps を減らすか Latency を上げてください。4つの適切な測定が割り当てられ、フィルターの準備が完了するまでは音をそのまま通し、処理遅延も加わりません。
準備完了後の総遅延は、選んだ Latency とフィルターのモデル化遅延の合計です。アプリの通常のパイプライン遅延補償が適用されます。リアルタイムモニタリングや映像同期では Total Delay を確認してください。Crosstalk Cancellationにはグラフなどの可視化はありません。