Phase Select EQ
Phase Select EQは、周波数、左右の絶対位相差、左右のレベルバランスで選んだステレオ成分をブーストまたはカットします。3つの範囲すべてに入る成分だけが処理されます。左右のスペクトルには同じ正のゲインを適用するため、位相差を回転、補正したり、新しい位相差を作ったりするエフェクトではありません。通常の周波数だけを基準にするEQでは、中央の音と同じ周波数にある左右へ広がった音や片側へ寄った音を分けにくい場合に使用します。
独立した5つのBandを常に使用できます。各Bandには、Gainがそのまま適用される内側の Core と、倍率が100%へ滑らかに移行する外側の Transition があります。重なったBandのGainは乗算されます。たとえば、150%と50%のCoreが重なると結果は75%です。複数のブーストを重ねると0 dBFSを超えることがあるため、十分なヘッドルームを確保し、バイパスと比較してください。
Phase Select EQが報告する処理レイテンシーは、FFTサイズとHopサイズの合計です。48 kHzでは4,096 + 1,024 = 5,120サンプル、約106.7 msです(44.1 kHzでは約116.1 ms)。チェーン全体の遅延は、アプリの Total Delay で確認できます。この遅延は、リアルタイムモニタリングや映像との同期に影響する場合があります。
選択マップの見方
縦軸は対数周波数です。低い周波数が下、高い周波数が上に表示されます。
マップ上部の Phase と Balance で横軸を切り替えます。PhaseまたはBalanceの設定を操作すると、対応する表示へ自動で切り替わります。
Phase表示では、中央の0°が同相、左右端の-180°と+180°が同じ逆相の点です。選択には位相差の絶対値を使うため、枠は0°を中心に鏡像表示され、+60°と-60°を同じように処理します。
Balance表示では、50:50が中央、左端が左チャンネルのみ、右端が右チャンネルのみです。Balanceは
(右の振幅 - 左の振幅) / (左の振幅 + 右の振幅) × 100%で、負は左寄り、正は右寄りを表します。枠は鏡像ではなく1つの矩形です。各ドットは最近測定された入力成分を表します。強い成分ほど明るく大きく表示され、古いドットは次第に消えます。
測定された成分は白いドットで表示されます。有効なBandの枠だけが描画され、編集中のBandは明るいグリーン、その他の有効なBandは薄いグリーンになります。各Coreの左上にある数字がBand番号です。
各Core番号の横にある短いバッジは、そのBandの非表示軸における選択範囲全体を示します。たとえば
P 20°›40°–80°›100°は、Phaseの外側下限 › Core下限–上限 › 外側上限を表します。Balanceでは同じ順序を左右比で示し、B 100:0›80:20–70:30›0:100のように表示します。P fullまたはB fullは、そのBandが非表示軸を制限していないことを示します。内側の実線枠がCore、外側の破線枠がTransitionです。Phase表示では、0°を含むBandは中央でつながり、180°まで達するBandはマップの左右端をまたいで続きます。
Graphの選択肢横のバッジには、非表示中の軸のCore範囲と、必要な場合はTransition範囲が表示されます。選択中のBandがその非表示軸で除外するドットは暗く表示されるため、表示を切り替えなくても3条件のANDを確認できます。
片方のチャンネルだけにある成分はBalanceが-100%または+100%になります。Phase表示では左だけの成分を-180°、右だけの成分を+180°に置くため、ハードパンした音はどちらの表示からでも選択できます。
Balanceのグリッドは左右の比率で表示されます。レベル差とのおおよその対応は次のとおりです。
| Balance | 0% | ±17% | ±33% | ±60% | ±82% | ±100% |
|---|---|---|---|---|---|---|
| L/Rレベル差 | 0 dB | ±3 dB | ±6 dB | ±12 dB | ±20 dB | 片側のみ |
ビジュアル表示
マップにマウスを重ねるか、タッチしてなぞると、その位置の周波数と、位相差またはBalanceを読み取れます。
音質調整ガイド
左右に広がった高域の刺激感を抑える
4~12 kHz、90~180°付近にBandを設定します。
Gainは70~90%、Transitionは広めから始めます。
効果: 中央寄りの細かな音をなるべく保ちながら、逆相に近い高域成分を穏やかに抑えます。
中央のボーカルに存在感を加える
1~4 kHz、0~30°付近にBandを設定します。
Gainは110~125%から始めます。
効果: 左右に広がった残響へ同じブーストをかけずに、同相に近い中域成分を強調します。
拡散した低中域の響きを整える
150~600 Hz、60~150°付近にBandを設定します。
Gainは80~90%から始め、変化が滑らかになるまで周波数Transitionを広げます。
効果: 中央寄りの基音を保ちながら、左右に広がる低中域のエネルギーを抑えます。
片側へ強く振られた楽器を抑える
Balance表示で、左寄りなら-100~-70%、右寄りなら+70~+100%を選び、楽器に合わせて周波数範囲を絞ります。
片側だけの成分が置かれる-180°または+180°を含むように、Phase Coreを150~180°付近に設定します。Balanceだけで選びたい場合は、Phase Coreを0~180°の全域にします。
Gainは70~90%、Balance Transitionは中程度から始めます。
効果: 同じ周波数の中央成分をなるべく保ちながら、片側へ強く寄った成分を抑えます。
中央定位の音を強調する
Balance Coreを-17~+17%、Phase Coreを0~30°付近に設定し、対象音に合わせて周波数範囲を絞ります。
Gainは105~120%から始めます。
効果: 左右へ振られた音よりも、左右がほぼ同じレベルで同相に近い成分を優先して強調します。
ここで示した位相範囲は一般的な傾向であり、音源の位置を決める固定的な基準ではありません。実際の曲でドットが現れる場所を確認しながら小さく調整し、ヘッドホンとスピーカーの両方で結果を確認してください。
パラメーター
Band 1~5 / チェックボックス (Off/On): 編集するBandを選択し、設定を変えずに有効・無効を切り替えます。
Gain (0%~200%): Core内のレベル倍率を設定します。100%ではレベルを変更せず、0%では選択した成分を除去し、200%では振幅を2倍にします。
Solo (Off/On): SoloをOnにしたBandが選んでいる音だけを確認できます。有効なBandのいずれかでSoloがOnの間はGainが適用されず、SoloにしたBandの外側は無音になります。境界ではTransitionによる滑らかな減衰がそのまま働きます。複数のBandをSoloにすると、それぞれの選択範囲を合わせた音が出力されます。すべてのSoloをOffにすると、通常の処理に戻ります。
Core Low Frequency / Core High Frequency (20 Hz~40 kHz、現在のサンプルレートによる上限あり): 効果を100%適用する周波数範囲を設定します。
Core Low Phase / Core High Phase (0°~180°): 効果を100%適用するL/R絶対位相差の範囲を設定します。
Outer Low Balance / Core Low Balance / Core High Balance / Outer High Balance (-100%~+100%): Balanceの4つの境界を直接設定します。Coreの2値は効果を100%適用する左右の振幅バランス範囲、Outerの2値はTransitionが無処理に達する位置を決めます。負は左寄り、正は右寄りです。
Low Frequency Transition / High Frequency Transition: 周波数Coreの下側と上側で、効果が0~100%の間を移行する範囲を設定します。
Low Phase Transition / High Phase Transition: 0°側と180°側で、効果が0~100%の間を移行する範囲を設定します。
マップ上のハンドル、スライダー、数値入力は同じ値を編集します。マウスでもタッチ操作でも、選択中のBandは外枠内のドラッグでBand全体が移動し、Coreの辺または隅のドラッグでサイズが変わり、外側の辺のハンドルで各Transitionを変更できます。低位相側のハンドルは中央を越えず、Core Low Phaseは0°、Low Phase Transitionは最大幅で停止します。Core Low Phaseがちょうど0°のときは中央のハンドルを最初に左右どちらへも動かせますが、いったん片側へ動かすと、そのドラッグが終わるまで同じ側に固定されます。