5Band FIR PEQ
5Band FIR PEQは、5Band PEQに近い5バンドの操作性を保ちながら、すべての帯域をまとめて1本のFIRフィルターとして構成します。再生音の精密な補正、非常に狭いカット、急峻なシェルフ遷移を、再帰フィルターの安定性に制約されず設定したい場合に使います。Minimum Phaseは処理遅延を抑え、Linear Phaseはすべての周波数を一定時間だけ遅らせます。
音質調整ガイド
まず Minimum Phase、32768 Taps、Latency 128 samplesで始めます。通常の低域・中域・高域調整には、0.7~2程度の広いQを使います。
測定で確認した狭いピークを抑えるにはPeakingを選び、中心周波数をピークに合わせてQを徐々に上げます。10を超える値は精密補正向けです。極端に狭い応答ではTapsが不足する場合があるため、ステータスを確認してください。
低域のバランスにはLow Shelf、高域のバランスにはHigh Shelfを使います。普段のリスニングでは1~3 dB程度の小さな調整から始めます。
不要な帯域端を取り除くにはLowPassまたはHighPassを使います。Slopeは12または24 dB/octから始め、より鋭いカットが必要な場合だけ大きくします。
周波数全体で一定の位相遅延が重要で、追加遅延を許容できる場合は Linear Phase を選びます。特に急峻な設定ではトランジェントより前にエネルギーが現れることがあるため、打音の強い音楽ではMinimum Phaseとも比較してください。
FIR構成はフィードバック極による不安定化を避けられますが、大きなブーストや非常に高いQでは、選択性が高く長いインパルス応答になります。孤立した共鳴にはブーストよりカットを優先し、再生ヘッドルームを確保してください。
パラメーター
Phase
Minimum Phase - 因果的なミニマムフェーズ応答を作り、FIR長の半分に相当する遅延は加えません。選択したLatencyは加わります。
Linear Phase - 対称なリニアフェーズ応答を作り、選択したLatencyに加えて
Taps / 2samplesのFIR遅延が発生します。
Taps - FIR長を8192、16384、32768、65536、131072から選びます。増やすと低域や非常に高いQの精度が上がりますが、メモリー使用量、設計時間、Linear Phaseの遅延も増えます。
Latency - 畳み込みエンジン先頭部の遅延を0、128、256、512、1024 samplesから選びます。小さいほど遅延は減りますが、処理負荷は上がります。
5つの調整バンド - 初期中心周波数は100 Hz、316 Hz、1 kHz、3.16 kHz、10 kHzです。各バンドを個別にEnableできます。
Type - Peaking、LowPass、HighPass、Low Shelf、High Shelf、BandPass、Notchから選びます。有効なすべてのバンドを合成してからFIRを設計します。
Freq - バンドの周波数を20 Hz~20 kHzに設定します。
Gain - Peaking、Low Shelf、High Shelfのブースト/カットを-20~+20 dBに設定します。LowPass、HighPass、BandPass、Notchでは使用しません。
Q - 応答幅を0.1~100に設定します。大きいほど狭く、小さいほど広い変化になります。スライダーは対数目盛です。
Slope - LowPassまたはHighPassの減衰勾配を0.1~384 dB/octに設定します。スライダーは対数目盛で、この2つのTypeを選んだ場合だけ操作できます。
表示の見方
灰色の曲線は、現在のバンド設定による合成後の設計値を示します。
緑色の曲線は、設計されたFIRが実際に実現する振幅特性です。2本が離れている部分は、選択したTapsでは設計値を正確に再現できていないことを示します。
番号付きマーカーは5つのバンドに対応します。左右へドラッグすると周波数、上下へドラッグするとGainが変わり、無効なバンドは暗く表示されます。
ステータス行にはFIRの設計/準備/使用状態と、総処理遅延(samplesおよびmilliseconds)が表示されます。
選択したTapsで極端な応答を正確に再現できない場合は、Tapsを増やすかQまたはSlopeを下げるようステータスに表示されます。
グラフにマウスを重ねるか、タッチしてなぞると、その位置の値を読み取れます。