Group Delay EQ
Group Delay EQは、通常のイコライザーと対になるエフェクトです。各帯域の音量ではなく、各帯域がいつ届くかを変えます。15本のスライダーで帯域ごとの遅延量を設定すると、その遅延を平坦な振幅特性で実現することを目標に1本のFIRフィルターを構成します。振幅特性の平坦さは設計目標であり、常に保証されるものではありません。有限長のTapsで理想特性を近似するため、遅延量が大きい設定や帯域間で急に変化する設定では、測定可能な振幅リップルが生じることがあります。スピーカーやクロスオーバーのタイミングのずれを補正したり、位相ひずみが自分の環境でどれだけ聴き取れるかを確かめたりするのに使います。
音に効くのは帯域どうしの差だけです。すべての帯域を同じだけ遅らせても単なるディレイになるため、本エフェクトは内部の遅延量を固定し、その前後に各帯域を動かす形にしています。すべてのスライダーが0 msの間は完全に素通しで、レイテンシーも増えません。
音質調整ガイド
スピーカーとサブウーファーのタイミング: 低音が他より遅れて聞こえる場合は、クロスオーバーより上の帯域を同じ量だけ遅らせ、グラフがその範囲で平坦になるようにします。2~10 ms程度の補正が一般的で、キックドラムやベースで判断しやすくなります。
バスレフスピーカーと部屋の共鳴: バスレフ型は共振周波数付近で群遅延が増えます。該当する低域を下げるか、他の帯域をすべて上げて、曲線が平坦に近づくようにします。50 Hz以下にわずかな差が残るのは普通です。
位相ひずみの聴感テスト: 1つの帯域を+10 msにしてエフェクトのオン/オフを比較し、差が分からなくなるまで値を下げていきます。この結果を位相だけの比較として解釈できるのは、ステータス行のリップルが十分に小さく、緑色の「実現」曲線が灰色の「目標」曲線とよく重なっている場合です。それ以外では、振幅の変化や遅延特性の再現誤差も聴こえ方に影響します。
1バンドずつ調整する: スライダーは1本ずつ動かして聴き比べます。位相だけの変化は多くの音楽で繊細で、主にドラム、撥弦楽器、ピアノの立ち上がりなどのトランジェントで表れます。
2本の曲線を確認する: 緑色の曲線が灰色の曲線から離れている場合、現在のTapsではその形を実現できません。Tapsを増やすか、隣り合う帯域の差を小さくしてください。
パラメーター
Taps - FIR長を4096、8192、16384、32768から選びます。低域ほど長いフィルターが必要で、96 kHzでは16384 Tapsで60 Hz付近まで大きな遅延差も再現できます。短い設定では低域から精度が落ちます。Tapsはフィルターが保持できる遅延量、つまりスライダーの可動範囲も決めます。増やすとレイテンシーと処理負荷も増えます。
Latency - 畳み込みエンジン先頭部の遅延を0、128、256、512、1024 samplesから選びます。小さいほど遅延は減りますが、処理負荷は上がります。
帯域スライダー(25 Hz~16 kHz) - 15本のスライダーで各帯域の群遅延を設定します。正の値はその帯域を遅らせ、負の値は早めます。可動範囲はフィルターが保持できる遅延量そのもので、96 kHzでは4096 Tapsで±18.6 ms、32768 Tapsで±149.3 msです。最高域はこの値をそのまま実現でき、低い帯域ほど大きな設定に追従するには多くのTapsが必要になります。どこまで実現できているかはグラフで確認できます。値は周波数方向になめらかに補間されるため、隣り合う帯域は常につながった特性になります。
位相角 - ms値の下には、同じ遅延をその帯域の中心周波数における位相の回転量として表示します。1周(360°)を超える場合は「周期数 + 残りの角度」に分解して表示するため、
+2c180°は2周と半回転を意味します。リセット - スライダーをダブルクリックするとその帯域が0 msに戻ります。グラフ上のResetボタンでは全帯域を一度に戻せます。
総レイテンシーはLatencyの設定値にTapsの半分を加えた値です。スライダーを動かしても変わらないため、チェーン全体の遅延が変わるのはTapsまたはLatencyを変更したときだけです。
表示の見方
灰色の曲線は目標特性です。20 Hz~20 kHzの対数周波数軸上に、指定した遅延を補間して表示します。縦軸は現在の設定に合わせて自動で拡大縮小し、最小で±5 msです。
緑色の曲線は、設計されたフィルターが実際に実現している特性です。2本が重なっていれば設定どおりに実現できており、離れている場合は現在のTapsでは追従できていません。
ステータス行には総レイテンシー(samplesおよびmilliseconds)と、フィルターの振幅リップルが表示されます。リップルは実現された振幅特性が平坦という設計目標からどれだけずれているかを示し、値が小さいほど目標に近いことを意味します。0.3 dBが精度警告の基準です。
グラフにマウスを重ねるか、タッチしてなぞると、その位置の値を読み取れます。