Tonal Balance EQ
再生中の音楽の長期的な音色バランスを測定し、選んだ音楽スタイルの市販音源で一般的なバランスへ少しずつ近づけます。録音やプレイリスト、ストリーミングの音がいつもこもる、明るすぎる、低音がふくらむ、薄いなどと感じ、曲ごとに手でEQを調整せずに揃えたいときに使います。補正の対象は録音そのもので、スピーカーや部屋ではありません。スピーカーや部屋の補正にはRoom EQを使ってください。
測定したスペクトラムと目標は、全体のレベルを揃えてから比較します。そのため補正に影響するのはバランスの形だけで、録音の音量は関係しません。強すぎる帯域を下げたうえで、1つのメイクアップゲインで全体を持ち上げるので、ラウドネスは変わらず、弱かった帯域が前に出ます。帯域制限された録音の何も入っていない高域や、一定のヒスノイズのように、実際の音楽成分がない帯域は持ち上げません。変化のないシンセパッドのような定常的でノイズに近い音や、静かな間にも同じレベルで鳴り続ける音も、背景ノイズと区別できないため同じ扱いになります。無音や静かな間は測定に含めません。すべてのチャンネルに同じ補正をかけるためステレオイメージは変わらず、遅延も加わりません。
スタイルごとの目標は、自由な再利用が認められたライセンスで公開されている楽曲コレクションの長期スペクトラムから学習したものです。各スタイルは、代表的なカーブと、曲ごとの典型的なばらつきを持っています。これに対して Tilt は固定の基準で、低域では平坦、そこから上は一定の傾きで下がります。どの目標も、5つのTarget Adjustバンドで好みに合わせて形を変えられます。
音質向上ガイド
さまざまな曲が混ざったプレイリストやストリーミング: まずは初期値(Target All、Amount 100%、Averaging Time 30 s)で使います。補正は、測定の信頼性が高まるにつれて数十秒かけて徐々にかかっていくので、音楽を30秒ほど再生してから、プラグインをオフにしたときの音と比べてください。
アルバム全体に一定の補正をかける: アルバムの再生開始時に Reset を押し、Averaging Timeを ∞ にします。Reset以降に聴いたすべての音を平均するため、補正は次第に落ち着き、変化が小さくなっていきます。
1つのスタイルの音楽を聴く: 再生する音楽に最も近いTargetを選びます。たとえばオーケストラの録音には Classical、ダンスミュージックには Electronic が適しています。スタイルが混在する場合はAllを選んでください。
補正を控えめにする: Amountを50%程度、またはRangeを3 dB程度に下げます。細かな形は整えず大まかな傾きだけを補正したい場合は、Smoothingを1 oct程度に上げます。
曲の中の変化に追従させる: Averaging Timeを0.5~1 s程度に短くすると、暗めのAメロと明るいサビをそれぞれ補正できます。音色が揺れ動いて聞こえる場合は、Averaging Timeを長くしてください。
両端の帯域には手を加えない: Lowを上げると最低域の形を変えずに残せます。Highを下げると最も高いオクターブの形を変えずに残せます。
自分好みのハウスカーブを作る: Target Adjustで目標の形を変えます。たとえば8 kHzにQ 0.7、+1.5 dBのHigh shelfを置くとやや明るめのバランスを、300 Hz付近にQ 0.7、-2 dBの幅広いPeakを置くと中低域を控えめにしたバランスを目標にできます。すべての録音に同じEQをかけるのではなく、録音ごとに必要な分だけ、その形へ近づけます。
機械的な基準を使う: Targetで Tilt を選びます。初期値のSlope -6 dB/octでは、多くの市販音源よりわずかに暗いバランスが目標になります。より一般的なバランスにしたい場合はSlopeを-4.5~-5 dB/oct程度に、より明るいバランスにしたい場合はピンクノイズの基準である-3 dB/octにします。
メイクアップゲインが保つのはラウドネスであり、ピークレベルではないため、ピークが上がることがあります。後段でクリップする場合は、このプラグインの後でレベルを下げるか、リミッターを追加してください。
パラメータ
Target - 目標とする音色バランスを All、Classical、Electronic、Pop、Rock、Tilt から選びます(初期値All)。
Allは4つのスタイルを均等に混ぜたもの
Tiltは学習したスタイルではない固定の基準で、Cornerより下では平坦、そこから上はSlopeの傾きで下がる
Slope - TargetがTiltのときだけ表示。Cornerより上で目標が下がる傾き (-18dB/octから0dB/oct、初期値-6dB/oct)
-3dB/octはどのオクターブもエネルギーが等しいピンクノイズに相当し、0dB/octはホワイトノイズ、-6dB/octはブラウンノイズに相当する
一般的な市販録音の平均はおよそ-5dB/oct(Pestanaら)なので、初期値では一般的な音楽よりわずかに暗いバランスが目標になる。傾きを緩やかにすると高域の多いバランスが、急に(値をよりマイナスに)するほど低域寄りのバランスが目標になる
Corner - TargetがTiltのときだけ表示。目標が平坦になる範囲の上端の周波数 (20Hzから1000Hz、初期値250Hz)
下げると傾きが最低域まで続き、最低域の多いバランスが目標になる
上げると低域の平坦な範囲が広がり、低域が控えめなバランスが目標になる
Amount - 補正をどれだけかけるか (0%から100%、初期値100%)
下げると補正全体が小さくなり、0%では音は変わらない
0%でも測定とグラフは動き続け、Range、Smoothing、Low、Highは操作できなくなる
Range - 各帯域に加える補正の最大量。上げる方向と下げる方向の両方に適用される (0dBから12dB、初期値6dB)
小さくすると変化が控えめになり、0dBでは補正がオフになる
大きくすると、目標から大きく離れた録音もより目標に近づけられる
Smoothing - 補正カーブの山や谷の幅 (0.1667octから2oct、初期値0.5oct)
大きくすると幅広くなだらかな傾きになる
小さくすると、狭いピークやディップも含めて目標により近く追従する
Averaging Time - 測定を平均する時間 (0.1sから∞、初期値30s)
短くすると、曲の中の変化に音色が追従する
長くすると補正が安定し、曲が変わってもゆっくりとしか変化しない
スライダーの右端は ∞ で、最後のReset以降のすべての音を平均する。値の入力欄に∞と入力することもできる
Low - 補正範囲の下端 (20Hzから200Hz、初期値20Hz)
これより下の帯域には、Lowでの補正値がそのままかかる
上げると最低域の形を変えずに残せる
High - 補正範囲の上端 (2000Hzから20000Hz、初期値16000Hz)
これより上の帯域には、Highでの補正値がそのままかかる
下げると最も高いオクターブの形を変えずに残せる
Average SPL - リスニング位置での推定平均リスニング音圧。Loudness Equalizerと同じ考え方の設定 (60dBから96dB、初期値83dB)
レベルの低い帯域が聞こえる大きさかどうか、つまり持ち上げてよいかどうかの判定だけに使い、出力レベルは変えない
下げると、聞こえないとみなすレベルの低い帯域が増え、その帯域は持ち上げない
上げると、聞こえる音楽成分とみなすレベルの低い帯域が増える
Target Adjust - グラフの下にある、目標の形を変える5つのバンド。Room EQのAdditional EQや5Band PEQと同じコントロールを使う
各バンドはオン/オフを切り替えられ、種類をPeak、Low shelf、High shelfから選べる
周波数: 20Hzから20kHz(初期値は100Hz、316Hz、1kHz、3.16kHz、10kHz)
Gain: -20dBから+20dB(初期値0dB)。プラスにするとその帯域が多め、マイナスにすると少なめのバランスが目標になる。0dBでは目標は変わらない
Q: 0.1から10、シェルフでは2まで(初期値0.7)。大きくするほど狭い範囲に効く
Target Adjustが変えるのは目標だけです。プラグインはこれまでどおり録音ごとに測定し、同じAmount、Range、Smoothing、Low、Highのまま、調整後の目標へ近づけます。別のEQを上乗せするわけではありません。そのため、目標全体を同じだけ上げ下げしても何も変わりません。比較の前に全体のレベルを揃え、ラウドネスも保つからです。実際の音楽成分がない帯域は引き続き持ち上げず、Lowより下とHighより上の補正もいつもどおり一定に保ちます。目標には聴覚に合わせた幅の帯域ごとに追従し、さらに平滑化するため、狭いピークやノッチは幅が広がって小さくなります。その様子はグラフで確認できます。狭い範囲の調整には5Band PEQを使ってください。Rangeは引き続きすべての帯域の補正量を制限するので、大きく調整した場合はRangeも上げる必要が出ることがあります。
ビジュアル表示
横軸は約26Hzから18.6kHzの周波数、縦軸はdB単位のレベルです。縦軸の範囲は、目標の帯、EQ response、補正範囲内の測定レベル、Target Adjustのハンドルと曲線が収まるように広がり、ResetまたはTargetの変更で±12dBに戻ります。目標から大きく離れた測定点は、グラフの外にはみ出すことがあります。
Target は、目標とするバランスをTarget Adjustも含めて示す線で、その平均が0dBになるように描かれます。スタイルを選んだ場合、周囲の網掛けの帯は、そのスタイルの曲ごとの典型的なばらつきを示します。固定の基準であるTiltには帯はありません。レベルは1Hzあたりの値(スペクトル密度)で表示されるため、TiltはCornerより下では水平に、その上ではSlopeの傾きで下がる直線として描かれます。ピンクノイズは-3dB/octの直線になります。
Measured はドット付きの線で、測定した長期スペクトラムを目標に揃えて表示します。目標の帯より下にある帯域は一般的な録音より弱く、上にある帯域は強いことを示します。 周波数の試聴中は測定を一時停止し、試聴が終わると再開します。
EQ response は太い線で、メイクアップゲインを含めてプラグインがかけているゲインを示します。0dBは変化なしを表します。
Withheld lift は、EQ responseの線から上に向かって塗りつぶした領域です。その帯域を音楽成分と確実には判定できないため(冒頭の説明を参照)持ち上げを控えた分のおおよその大きさを、高さで示し、読み取り表示ではdB単位の概算値で表されます。正確なゲインではなく、AmountとRangeに連動します。
Target adjust は0dB付近の細い線で、Target Adjustの各バンドを設定どおりに合成した特性です。番号付きのハンドルは各バンドの周波数とGainの位置に表示され、0dBが変化なしを表します。Targetの線上に置かれるわけではありません。ハンドルを左右にドラッグすると周波数が、上下にドラッグするとGainが変わります。ハンドルの上でマウスホイールを回すとQが変わり、右クリックするとバンドのオン/オフが切り替わります。無効なバンドは暗く表示されます。
再生中は、Targetの線がハンドルの操作にすぐ追従します。Targetの線がTarget adjustの線よりなだらかになっている部分は、その部分の指定が平均化されていることを示します。停止中は、Targetの線は最後に測定したときの形のままで、指定した内容はTarget adjustの線で確認できます。停止中に変えたSlopeとCornerは、再生を再開するとTargetの線に反映されます。
Lowより下とHighより上の範囲は暗く表示されます。
グラフにマウスを重ねるか、タッチしてなぞると、その位置の値を読み取れます。各曲線の値に加えて、測定時間のうちその帯域が聞こえる音楽成分と判定された割合を示す Presence、現在の Make-up gain、最後のReset以降に測定したすべての音の Loudness(LKFS)が表示されます。
まだ何も測定していないときは、グラフに「Play audio to start measuring」と表示されます。この状態でもTarget AdjustのハンドルとTarget adjustの線は表示され、編集できます。
Reset は測定を消去し、現在の音から測定をやり直します。Target Adjustは変わりません。
Copy as PEQ は、グラフのEQ responseを5Band PEQの設定としてコピーします。Effect PipelineでCtrl+Vを押すと、そのカーブの5Band PEQが選択中のエフェクトの前に(何も選択していなければ末尾に)追加されます。現在の補正をそのまま固定するには、Tonal Balance EQをオフにするか削除します。5Band PEQが再現するのはLowからHighまでのカーブの形で、全体のレベルは含まないため、音量がわずかに変わることがあります。このボタンは、グラフにEQ responseが表示され、Amountが0%より大きいときに使えます。