SW Radio Simulator
SW Radio Simulatorは、送信処理とAM変調または単側波帯変調、深い周波数選択性フェージングを伴う電離層伝搬、空電と同一チャンネルの混信局、包絡線検波・同期検波・BFO検波とAGCを備えた狭帯域の通信型受信機、ラジオ用スピーカーまでをモデル化した短波チェーンに音楽を通します。遠くの国際放送を短波受信機で受けたときの音 — 狭くこもった音色、電離層とともに浮き沈みする音量、近い周波数の局が生むホイッスル — を音楽に与えるときに使います。ModeをUSBまたはLSBにすると同じチェーンが通信型受信機になり、同調が正確でないと音全体が同じHzだけずれて、鼻にかかった非調和な響きになります。
このエフェクトのリアルタイム処理に対応した環境が必要です。処理を利用できない環境では音声は変化せず、HUDにエフェクトを利用できないことが表示されます。
AM・FM・加算型Lo-Fiエフェクトとの違い
AM Radio Simulatorは中波受信のモデルで、通常は安定した地表波が支配的でフェージングは従属的な要素です。通過帯域は広く、C-QUAMステレオも選べます。
SW Radio Simulatorは短波のモデルで、信号は電離層反射で届きます。深い周波数選択性フェージングが主役で、音声帯域はより狭く、同一チャンネル局によるヘテロダインのホイッスルも音の一部です。ここにある他のエフェクトにはないUSB・LSB受信も選べます。短波の送信はモノラルのため、処理後の信号は常にモノラルです。
FM Radio Simulatorはステレオマルチプレックス、せり上がるヒス、閾値クリックを持つ広帯域FMを再現します。劣化の系統が異なります。
Noise BlenderやHum Generatorは音楽を変えずにノイズやハムを重ねます。本エフェクトは音楽を変調し、伝搬させ、検波するため、ノイズ、混信、歪みがTuning、IFフィルター、AGCに反応します。
サウンドキャラクターガイド
狭くこもった音: 送信帯域と狭い受信機IFが高域の大半を削り、短波受信機らしい制限された音色になります。
ゆっくり深いフェージング (QSB): 受信レベルが絶えず浮き沈みします。短波を特徴づける挙動で、既定値でも常に働いています。
水っぽいフェード歪み: 深いフェードでは搬送波と側波帯の沈み方が異なるため、包絡線検波器が音声を正しく復元できなくなります。フェードの底で音量が下がるだけでなく、こもって不安定な「水中のような」音になります。この強さはDelay Spreadで変わり、同期検波にするとほぼ解消します。
フラッター: Fading Speedを上げると浮き沈みが速い明滅に変わり、擾乱時や極域を通る経路のような受信になります。
ヘテロダインのホイッスル (QRM): 同一チャンネルの局の搬送波が自局の搬送波とビートを起こし、Interf. Offsetと同じ高さの持続音が出ます。
空電 (QRN): 遠くの雷がバリバリという音として届き、IFフィルターを通ってリンギングします。
ポンピング: フェードのたびにAGCが音量を追いかけ、曲間で背景ノイズが息をするように上下します。
単側波帯の狭さ (USB・LSB): 復元される音声がIF Bandwidthの半分まで — 既定の6 kHzならおよそ3 kHzまで — に収まるのはどのModeでも同じです。搬送波が抑圧され側波帯が1本しか送られないため、通過帯域の残り半分には信号がなくノイズと混信だけを通し、通信回線らしい乾いた狭い音になります。
「ドナルドダック」的な同調ずれ (USB・LSB): BFOはすべての成分を定数倍ではなく同じHzだけ動かすため、倍音が基音の整数倍でなくなります。声や楽器は鼻にかかった非調和な響きになり、USBとLSBではずれる向きが逆になります。
音節ごとのAGC (USB・LSB): 音の切れ目には何も送られないため、AGCは番組そのものを追いかけます。休止部で背景が持ち上がり、次の音の出だしにアタックが付きます。
無音明けの一瞬だけ大きな音: 再生開始時や無音の後に音楽が始まると、無音の間にゲインが全開のままになっているため、AGCが落ち着くまでの一瞬だけ大きく鳴ります。USBとLSBでとくに目立ちます。静かなチャンネルで受信機の電源を入れたときと同じ挙動で、意図的にそのまま残しています。
痩せて欠けるフェード (USB・LSB): 深いフェードでは、AMの包絡線検波のような水っぽい歪みではなく、1本の側波帯の中が周波数ごとに不均一に減衰します。音が痩せ、一部が抜け落ちます。
システムプリセット
エフェクトヘッダーのエフェクトプリセットをクリックすると、短波受信の代表的な場面をまとめて試せます。
Major Broadcaster - 卓上ラジオで聴く、安定して比較的広帯域な国際放送です。
Transoceanic Night - 遠距離信号の深い夜間フェージングと同期検波です。
Stormy 49 m Band - 急速なフェージング、空電、近接局の混信を伴う受信です。
パラメータ
Station
Radio (オン / オフ) - 放送局の送信をオン/オフします。オフにすると搬送波そのものが消え、受信機には空電と同一チャンネルの局と自身のノイズだけが残り、AGCが開ききってその背景ノイズが大きく鳴ります。放送が始まる瞬間、終わる瞬間の音の変化を再現できます。エフェクト自体をオフにした場合は音がそのまま素通りするので、それとは別の動作です。
TX Bandwidth (2.0~10.0 kHz) - 送信音声の帯域幅です。短波放送のチャンネル間隔は5 kHzのため、狭い既定値でも中波局より暗い音になります。上げるとより開いた送信になります。
Pre-emphasis (0~100%) - 送信前に高域を強調します。上げると狭い帯域の中でも存在感が増しますが、高域のピークが放送リミッターを強く駆動します。
Mod Depth (10~125%) - AMの変調度です。100%を超えると過変調となり、負ピーククリッピングが生じます。
Compression (0~20 dB) - 放送リミッターの深さです。上げるとピークを抑えて変調が均一になります。国際放送局がフェード中も了解度を保つための処理にあたります。
Propagation
Signal (-50~0 dB) - 受信信号の強さです。弱くすると受信機ノイズが目立ち、必要なAGCゲインが増えます。
Fading (0~100%) - 受信電力を、安定した直接波と遅れて届く2本の電離層波へ配分します。0%は変動のない近距離受信、既定値では遠距離信号らしい常時フェージングになり、100%ではフェードが最も深く、選択性フェージング歪みも最も強くなります。
Fading Speed (0.1~10.0 Hz) - 電離層波が変化する速さです。低い値ではゆっくりした浮き沈みになり、数Hz以上では速いフラッターに変わります。
Delay Spread (0.2~8.0 ms) - 帯域内の各部分がどの程度ばらばらにフェードするかを調整します。下げると音全体が一緒に揺れ、上げると水っぽく不均一なフェードが強まります。
Static (0~100/s) - 雷放電のような空電の発生回数です。各イベントはIFフィルターの手前へ入り、フィルターを通ってリンギングします。0でオフになります。
Interference (-80~0 dB) - 同一チャンネルを使う局の強さです。-80 dBで実質オフになり、0 dBへ近づくほど強くなります。
Interf. Offset (0.1~10 kHz) - 混信局のホイッスル音の高さを決めます。約3 kHz以下でははっきりした音になり、上げると高くなって、やがてIFフィルターで弱まります。
Tuning
Mode (AM / USB / LSB) - 放送らしいAMと、通信型受信機の狭い単側波帯音を選びます。BFO OffsetはUSBとLSBだけ、DetectorとDetector RCはAMだけで働きます。無効な操作子も値は保持します。
Tuning (-5.0~+5.0 kHz) - 希望局に対する受信機の同調ずれです。正の値では局より高い周波数に、負の値では低い周波数に同調します。小さく外すと音がこもり、非対称なフィルタリングによる歪みが増え、ヘテロダインのホイッスルの音量も変わります。大きく外すと、狭いIF通過帯域から局が外れていきます。高い側へ離調すると、USBの復調音は低い周波数へ、LSBの復調音は高い周波数へシフトします。低い側への離調では、この向きが逆になります。
BFO Offset (-1000~+1000 Hz) - USBとLSBの同調を微調整します。0 Hzから始め、小さくずらすと鼻にかかった音に、大きくずらすと元の音を判別しにくくなります。
IF Bandwidth (2.0~10.0 kHz) - 受信帯域を調整します。下げるとノイズや混信を抑えた乾いた通信音に、上げると細部も混信も多く残ります。6 kHzから始めます。
Receiver
Detector (Envelope / Synchronous) - AMで、Envelopeは深いフェードに水っぽい歪みを加えます。Synchronousは明瞭さを保ちやすい一方、Tuningが約±1 kHz以内のときに向きます。局を探す間はEnvelopeを使います。
AGC Speed (Slow / Mid / Fast) - 音量制御がフェードへ追従する速さです。Slowは浮き沈みとポンピングを残し、Fastは音量を安定させます。
Detector RC (20~500 µs) - 包絡線検波器の放電時間です。長くすると包絡は滑らかになりますが、高い変調度では高域の対角クリッピング歪みが増えます。DetectorがSynchronousのとき、およびUSBとLSBでは効果がありません。
Hum (-80~-20 dB) - 電源ハムの量です。-80 dBで実質オフになります。単なる加算ハムとは異なり、この設定の主成分は検波前の受信機ゲインを変調します。
Hum Freq (50 / 60 Hz) - 模擬する電源周波数を選びます。
Output
Speaker (Off / Small / Table) - ライン出力、携帯型短波受信機の小さなスピーカー、より厚みのある卓上通信型受信機の特性から選びます。
Output Gain (-24~+24 dB) - 受信機とスピーカー処理後の音量を調整します。
Mix (0~100%) - 元のステレオ音とモノラルの短波受信音を混ぜます。完全な受信音は100%から始め、原音の細部や広がりを戻したい場合は下げます。
HUDの読み方
S METERはAGC前に受信機が帯域内で受けている信号強度の合計を、ModeによらずS1~S9で示します。実機のSメーターと同じくIF通過帯域内のすべてを合わせて読むため、同一チャンネル局や雑音、空電も希望局と一緒に指針を持ち上げます。AMではその合計を搬送波が支配するため読みは安定しますが、USBとLSBでは搬送波が抑圧されているため番組に追従し、音の切れ目では雑音のレベルまで下がります。
FADEは現在の伝搬利得の変化をdBで示し、直接波と2本の電離層経路が打ち消し合うか強め合うかによって0 dBより下にも上にも振れます。短波ではここが主役の表示で、既定値では絶えず動き、最も深く沈んだところで音が水っぽく歪みます。この値は常に搬送波周波数での経路利得です。USBとLSBでは搬送波が抑圧されているため、抑圧された搬送波周波数における仮想的な経路利得を表しており、側波帯全体の減衰量でも番組のレベルでもありません。
AGC GAINは受信機が現在加えているゲインです。Signalが弱いほど、またはフェードが深いほど増えます。上限は+42 dBで、それより深いフェードは完全には補償されず、音量が下がったままになります。
MOD / EVENTS (USBとLSBではTX / EVENTS) は実効変調率 — USBとLSBでは側波帯のドライブ量 — に続けて、直近の空電 (⚡) とクリッピング (▲) の毎秒発生回数を示し、イベントの発生に合わせて点滅します。きれいな音を狙う場合、クリッピングが多ければMod DepthまたはDetector RCを下げます。クリッピングの計数はAMの過変調と包絡線検波のクリッピングを対象とするため、USBとLSBでは動きません。
推奨設定
遠距離の国際放送
TX Bandwidth: 4.5 kHz、Mod Depth: 90%、Signal: -15 dB、Fading: 55%、Fading Speed: 0.5 Hz、Delay Spread: 1.4 ms、Static: 2/s
Interference: -47 dB、Interf. Offset: 1.0 kHz、Tuning: 0 kHz、IF Bandwidth: 6.0 kHz、Detector: Envelope、AGC Speed: Fast、Hum: -80 dB、Speaker: Small、Mix: 100%
短波の日常的な音です。狭く、絶えずフェードし、ときどき空電が入り、かすかにホイッスルが聞こえます。
夜間バンドの深いフェード
Signal: -30 dB、Fading: 100%、Fading Speed: 0.3 Hz、Delay Spread: 5.0 ms、Static: 10/s
IF Bandwidth: 4.0 kHz、Detector: Envelope、AGC Speed: Slow、Detector RC: 150 µs、Speaker: Small、Mix: 100%
長く深い浮き沈みが続き、フェードの底で音が水っぽく歪み、信号が戻るときのAGCポンピングがはっきり聞こえます。
混み合ったバンド
Signal: -20 dB、Fading: 60%、Fading Speed: 0.5 Hz、Static: 8/s、Interference: -18 dB、Interf. Offset: 0.8 kHz
Tuning: +0.3 kHz、IF Bandwidth: 4.0 kHz、AGC Speed: Mid、Speaker: Small、Mix: 100%
番組の上に持続するヘテロダインのホイッスルが乗ります。Interf. Offsetで音の高さが、Tuningで音量が変わります。
同期検波
「夜間バンドの深いフェード」からDetectorをSynchronousに変更
深いフェード自体は残りますが、フェードの底での歪みが大きく減り、番組が聞き取りやすくなります。ロックを保つためTuningは±1 kHz程度に収め、Envelopeと聴き比べると検波方式の違いが分かります。
極域のフラッター
Signal: -25 dB、Fading: 90%、Fading Speed: 6 Hz、Delay Spread: 3.0 ms、Static: 5/s
IF Bandwidth: 5.0 kHz、Detector: Envelope、AGC Speed: Fast、Speaker: Small、Mix: 100%
ゆっくりした浮き沈みではなく、擾乱時や極域を通る経路のような速い明滅になります。
単側波帯の局
Mode: USB、Tuning: 0 kHz、BFO Offset: 0 Hz、TX Bandwidth: 3.0 kHz、IF Bandwidth: 6.0 kHz
Signal: -20 dB、Fading: 55%、Fading Speed: 0.5 Hz、Static: 2/s、AGC Speed: Fast、Speaker: Small、Output Gain: 0 dB、Mix: 100%
同調の合った、狭く乾いた通信音になり、音の切れ目でAGCが息をします。もともとAM局と近い音量になるため、追加のトリムは不要です。
同調をずらしたドナルドダック声
「単側波帯の局」からBFO Offsetを-150 Hzに変更
すべての成分が150 Hzずつ上へ動くため倍音の並びが崩れ、声や楽器が鼻にかかった非調和な響きになります。同じ設定のままModeをLSBにすると今度は150 Hzずつ下へ動きます。もっと大きくずらしたい場合はTuningを使います。